学習マネジメント塾で目指すものは何なのかと訊かれたら、私は「負けないこと」だと答えます。「負けない」ということは「勝つ」こととは異なります。
古典随筆「徒然草」で書かれた負けないことの重要さ
「負けない」ことの重要さは古くから認識されており、古典随筆の「徒然草」において、以下のような文章があります。
双六(すごろく)の上手といひし人に、その手立(てだて)を問ひ侍りしかば、「勝たんと打つべからず。負けじと打つべきなり。いづれの手か疾く負けぬべきと案じて、その手を使はずして、一目なりともおそく負まくべき手につくべし」といふ。
【現代語訳】
双六が上手といわれた人に、勝つ方法をたずねたところ、「勝とうと打ってはならない。負けないよう打つべきである。どんな手を打てば早く負けるかをよく考え、その手は打たずに、一目でも遅く負ける手を選ぶことだ」と言う。
ここでの「双六」とは、運の要素もありますが、現代の囲碁や将棋に近いゲームです。その名人と呼ばれる人が「負けないように打つ」ことが最も重要だと言っているのです。
囲碁や将棋などでは「これをやれば必ず勝てる」というような必勝法はありません。ですが、「これをやったら必ず負ける」という必敗法は無数にあります。それらの無数にある「やってはダメなこと」を全て把握し、それらを全て避けることが最も勝利に近づく方法であるということです。
しかし、膨大な数の必敗法を把握して避け続けることは、たった一つの必勝法を覚えるよりはるかに大変で困難なことです。ですが、現代でも囲碁や将棋のプロ棋士はその大変で困難なことを常に継続し続けているからこそ結果を出すことができるのでしょう。
人生において「負けない」こと
勉強や仕事においても「負けない」ことは「勝つ」こと以上に重要であると言えます。例えば、莫大な利益を得ていた企業が数年後に倒産してしまうという話は決して珍しくありませんし、一流大学に進学しても退学したり、就職で失敗してしまい、そのままニートになってしまう人もいます。これらは、「負けない」ということをおろそかにした結果だと言えます。
「失敗」と「負け」は違います。人生において「失敗」はある程度しても良いでしょうが、「負け」は避けなくてはなりません。
私が考える人生における「負け」とは、
- 全ての努力を放棄して自暴自棄になってしまうこと
- 再起が極めて難しくなるような状態に追い込まれること
であると言えます。
その点で言えば、大学受験で不合格になることは失敗ではあっても、再起は十分にできるのですから負けではありません。ビジネスで損失を出したことは失敗ではあっても、その失敗を糧にして再起すれば負けではありません。
「負けない」ためには、受験で不合格になった後でも変わらず勉強を継続し続けることや会社が倒産するような莫大な損失を出さないようにすることが必要です。
当塾が目指す生徒像
勉強において、「勝つ」ということは「人よりも良い成績を取ること」「志望校に合格すること」であると言えます。ですが、常に勝ち続けることは容易ではありませんし、人生において失敗は何度か経験するものです。
重要なことは失敗しないことではなく、失敗した時に「負けない」ために、失敗に強い人間になることです。そのために必要なことは、常に努力を継続し続けることです。
例えば、大学受験が終わって家に帰ってきた場合、皆さんがその生徒やその家族の立場だったらどうするでしょうか?大学受験が終わった日ぐらいは、勉強のことを忘れてのんびり過ごすという人が多いと思います。
ですが、学習マネジメント塾では大学受験が終わって、家に帰って来た時にも、普段通りの勉強をする生徒を目指しています。もちろん、受験直前の時と同じだけの勉強をする必要までは無いでしょうが、ほんの10分か20分程度でも構いませんので、努力を途切れさせずに継続する必要があるのです。
もし、不合格で浪人が決定した場合、大学受験が終わってからずっと何もせずにいた生徒は気持ちを切り替えるのが大変です。中には気持ちの切り替えができないまま、自暴自棄になってニートなってしまう人もいるかもしれません。つまり、それだけ挫折に弱くなってしまうということです。
ですが、受験が終わって家に帰った当日から、合格発表の日まで毎日少しずつでも勉強をしてきた生徒は、受験が終わった日に既に気持ちの切り替えが完了しているので、来年の受験に向けて努力し続けることができるでしょう。
また、合格していた場合でも、受験が終わってから勉強することを忘れて遊び回っていた生徒は大学に入学後も勉強をする習慣に戻すことができず、大学で落ちこぼれてしまうことも考えられます。
そのため、毎日の努力を途切れさせてしまうことは合格でも不合格でも「負け」のリスクを抱えてしまうということです。
逆に言えば、一日も欠かさず少しずつ努力を継続し続けることができれば、どのようなことがあっても「負けない」人生を送ることができるでしょう。そして、それこそが当塾が目指す生徒像だと言えます。