マネジメントを行う上で必要な認識
マネジメントを行う上では主体性を持ち、自分が何を目指しているのかを常に意識することが大切であるとお伝えしましたが、更にマネジメントを行う上で理解しておかなくてはならない基本認識というものがあります。
それは以下のものです。
- マネジメントに万人共通・永遠不変の正解は無い
- マネジメントは失敗から学ぶことを前提にしている
- 人は自分で決めた目標や計画でなければ本気で取り組まない
これらについて、順番に説明させて頂きます。
マネジメントに万人共通・永遠不変の正解は無い
例えば会社経営のマネジメントを考えれば、万人共通・永遠不変の正解が無いということが理解し易いのではないでしょうか?世の中には様々な業種があり、扱う商品やサービス、客層、競合などは千差万別です。もし「これをやっていれば会社は安泰」というような共通の正解などがあるのであれば、倒産する企業がこんなに多いはずがありません。
また、世の中は常に動いており、今日正解だったものが明日には不正解になるということは普通に起こりえます。つまり、マネジメントにおいて何が正解であるかは実際にやってみるまで誰にも分からないのです。その誰も知らない正解を自力で探し出していくのがマネジメントの活動です。これは学習のマネジメントにおいても例外ではありません。”正解を覚える”というものに慣れ過ぎている学生が”考えて、決めて、行動する”ことを身に付けるためには、まずここを理解する必要があります。
学生レベルの勉強では正解が必ず用意されています。もし、「三角形の内角の和は何度になるか?」という問題が出た場合、その答えは「180度」であり、これは万人共通の正解です。
では、マネジメントではどうなるでしょうか?例えば「早起きして勉強すると集中できる」と一般的に言われていますが、これも万人にとっての正解とは言えません。世の中には極端に朝が弱い人もいますし、部活の朝練がある人などがさらに早起きするのは難しいでしょう。
また、「一日何時間勉強するのが正解か?」ということについても、その人の目標とする大学のレベルや現在の学力などで正解は変わってきます。東大や国立大学医学部を目指そうとしている生徒と高校を卒業できれば良いと考えている生徒が同じ勉強時間で良いわけがありませんし、受験までの残り時間、つまり現在1年生か3年生かでも変わります。
つまり学習マネジメントにおいて、以下の様な様々な要因を考慮しながら正解を探す必要があります。
・体質
・状況(家庭環境や部活動)
・現在の学力
・目標
・学年(受験までの残り時間)
そのため、そこに万人共通の正解を求めるのは無理な話です。
更に、学習のマネジメントでは”学習への集中”や”ストレス”なども考慮しますが、これらは本人しか分からないことです。従って、「誰かが正解を教えてくれる」と考えているとマネジメントは必ず失敗します。
マネジメントは失敗から学ぶことを前提にしている
マネジメントにおいて万人共通・永遠不変の正解などありませんし、誰も本当の正解は知りません。そこで正解を見つけるためには、様々な方法を試してみる必要があります。そうなれば当然失敗することもあります。何が正解なのかが分からない状態で挑戦しているのですから、ある程度の失敗は当然のことです。
重要なことは、”失敗をしないこと”ではなく、”失敗から学ぶこと”なのです。
マネジメントの基本はPDCA(計画、実行、評価、改善)ですが、ここで注目して頂きたいのは、C(評価)とA(改善)です。もし、最初から全てがうまくいくような正解が分かっているのであればC(評価)とA(改善)は必要無いはずです。このことからもマネジメントはある程度の失敗は前提の上での考え方だということが分かります。
PDCAを活用することで、成果を生むことが理解できる人は、仮に失敗して落ち込みそうになったとしても、その前にやるべき行動に集中し、行動を止めることはありません。彼らがすることはただ”原因を分析して対策を打つ”ということを粛々と行うだけです。
例えば、テレビ番組や映画に登場するヒーローは危機的状況やうまくいかない時ほど冷静に物事を考えて、適切な行動に移るシーンを見たことはないでしょうか。優秀な人ほど失敗したり危機的状況に陥ったりした時に、その状況をいかに改善するかということだけを考えて行動します。ここを本当に理解できていない人は、危機的状況に陥った時に悲観的感情に襲われて無気力になったり、誰かに責任転嫁することしか考えられなくなってしまうのです。
勉強において言えば、一生懸命勉強したのに良い成績が取れなかった時に、教師に恨み言を言ったり自暴自棄になったりしてしまいます。そんな時ほど、その結果からでた成果と課題を注視し、成果は素直に喜び、課題は次の改善へ情報としてとらえるといった認識を持つ必要があります。
人は自分で決めた目標や計画でなければ本気で取り組まない
これは学習マネジメントに限定した話ではありませんが、人は誰かにやらされている場合は、一定以上大きな成果を出すことはできません。
もしあなたが誰かから「この計画の通りに勉強しなさい」と言われたらどのように感じるでしょうか?多くの生徒さんが「面倒くさいなぁ・・・でもサボったら怒られるかもしれないからやらないとなぁ」というように感じながらしぶしぶ勉強をするでしょう。つまり「成果を出すために頑張る」のではなく「怒られるのが嫌だから仕方なく頑張る」と考える人が多いのです。これはまさに前章で書いた通り、”自分が何を目指しているのか”を見失っている状態だと言えます。
ここで、成果のレベルを以下の三つの階層に分けて考えてみます。
- 称賛されるレベル
- 普通のレベル
- 非難されるレベル
「怒られるのが嫌だから頑張る」と考えている人は「非難されるレベル」を少し超えれば目的を達成出来てしまうのでそれ以上の成果は目指さなくなります。
怒られるのが嫌だから勉強している場合
それに対し、高い成果を目指すことを自分で決断して取り組んでいる人は自分が心から満足出来る成果を出すこと、つまり「称賛されるレベル」を目指し続けます。
高い成果を目指すことを自分で決めて勉強している場合
勉強で言えば「平均点を取れればよい」「赤点さえ取らなければ良い」というように考えている生徒は抜きん出た成績を取ることはできないでしょう。親や教師から「勉強しなさい」とガミガミ言われてしぶしぶ勉強している生徒が自主的に勉強している生徒にいつまでもテストの点数が上回らないのはこのためです。
だからこそ、どれほどの目標を達成するためにどのような計画でどれだけ勉強をするかということは自分で決めなくては成果に繋がらないのです。