人は様々な行動原理に基づいて行動しています。それは例えば、お金のため、愛のため、地位のため、名誉のため、恩返しのため、保身のため、生活のため、恨みを晴らすため、などがあり、それらが複雑に絡み合っているため、人の行動原理というものは一見すると非常に複雑で難解なもののように見えます。
しかし突き詰めて考えると、実は人間の行動原理とは二つしかありません。その二つとは「何か欲しいものを得るため」か「何か嫌なものを避けるため」の二つです。ここではこれらを「プラスを得るための行動」と「マイナスを避けるための行動」というように呼ぶこととします。仕事や勉強なども必ずこの「プラスを得るため」と「マイナスを避けるため」のどちらか(あるいはその両方)の行動原理でやっている訳ですが、この二つの行動原理にはとても大きな違いがあります。それは同じ行為をしていても、プラスを得るための行為は楽しさや喜びが大きいのに対し、マイナスを避けるための行為は辛さやストレスが非常に大きいということです。
想像して頂きたいのですが、もしも「重さ20kgの岩を1km先の場所に持って行けば100万円が貰える」という状況になれば、ほとんどの人がやるでしょう。逆に「それをやっても何も貰えないが、やらなかったら貯金から100万円が奪われる」という状況になった場合もやるはずです。では、「やれば100万円が貰える」という状況で岩を運んでいる時と「やらなければ100万円が奪われる」という状況で岩を運んでいる時にどんな精神状態になるでしょうか?
やれば100万円が貰えるという状況の場合

やらなければ100万円が奪われるという状況の場合

この二つの状況ではやっている作業は全く同じなにのに感じるストレスが全く違うということに気づかないでしょうか?「プラスを得るための行動」をしている時は重い岩を運ぶという作業に喜びや楽しささえ感じていますが「マイナスを避けるための行動」はただただ「早く終わって欲しい!この苦しさから逃れたい!」としか考えないでしょう。つまり、「プラスを得るための行動」と「マイナスを避けるための行動」は同じことをしていても、その行動によって感じる喜びやストレスが全く違うのです。
この違いを分かり易くするために、プラスを得るための行動をしている時とマイナスを避けるための行動をしている時の心の状態について私が考えるイメージを以下に示します。
プラスを得るための行動をしている時の心理状態のイメージ

マイナスを避けるための行動をしている時の心理状態のイメージ

この図のような心理状態であれば、「プラスを得るための行動」は楽しく、「マイナスを避けるための行動」にはストレスや恐怖を感じるのは当然です。そのため、成功したいと考えるのであれば、自分の中のあらゆる行動を「プラスを得るための行動」に変換し「マイナスを避けるための行動」を最小限に抑えるようにすることが求められます。これは仕事でも恋愛でも勉強でも、全てのことに言えます。
仕事の例
仕事でも「社会に貢献したい」「出世したい」「金持ちになりたい」という「プラスを得るための行動」としてしている場合と「やらないと生活できないから」とか「クビになりたくないから」というような「マイナスを避けるための行動として」としてしている場合では辛さが全く違います。

恋愛の例
恋愛でも「彼女(彼)に喜んで欲しいから」という気持ちで相手のために何かをやるのは全く苦にならないでしょうが、「彼女(彼)に怒られなくないから」という気持ちで何かをやるのはストレスが大きいですし、そんな気持ちでは相手への愛情もすぐに冷めるでしょう。


多くの生徒が「勉強は嫌なもの」「勉強は辛いもの」という認識を持っているように見えますが、それは彼らの多くが「親や先生にやれと言われて渋々勉強する」「落ちこぼれたくないから勉強する」「テストで悪い点を取りたくないからテスト直前に慌てて勉強する」というような「マイナスを避けるための行動」として勉強してきた経験が多いためでしょう。
親や先生に怒られたくないから勉強している場合

試験で悪い点を取りたくないから勉強している場合

このように、「怒られたくないから」とか「悪い点を取りたくないから」などの典型的な「マイナスを避けるための行動」として勉強をする経験が多くなれば、勉強そのものを「嫌なもの」と認識してしまうようになるのも無理は無いことです。
たまに、「次のテストで○○点以上取らなかったら許さん!」とか「○○高校に合格しなかったらうちの子じゃない!」とか子供を脅迫するようなことを言って勉強させようとする親がいますが、これは長期的に見れば明らかに逆効果です。なぜならこれらは典型的な「マイナスを避けるための行動」を子供に強いていることであり、子供に強烈なストレスを与えているからです。最終的により大きな成果を得たいのであれば、そこに行きつくための行動を「プラスを得るための行動」にする必要があります。
「マイナスを避けるための行動」として勉強をしている生徒は「プラスを得るための行動」として勉強をしている生徒には、絶対勝てません。何故なら人は自分の意思で受け入れた苦境であれば、ある程度は耐えられますが、人に強要された苦境には耐えられないからです。考えて頂きたいのですが、この世に人にやれと言われて渋々エベレストに登頂成功した人はいないでしょうし、コーチに怒られるのが嫌だから渋々頑張ってオリンピックで金メダルを取った選手もいないでしょう。みんな自分の意思でそれに挑み、どれほど苦しくても「自分が選んだ道だから」という気持ちを持っていたから頑張れたはずです。
また、「○○がそう言うから」というような行動原理で動いている状態では当塾が最も重視している「責任を取る覚悟」も持つことはできません。子供に一切ストレスを与えるなとは言いませんし、しんどい思いをさせることも必要ではありますが、あくまで本人の意思に基づき本人が「プラスを得るための行動」として行う必要があります。
これは言い換えるなら、生徒のモチベーションを高めるための活動をするということですが、学校や一般的な学習塾では生徒の知的好奇心を刺激するような話をしたり、「勉強を頑張ればこんな良いことがある」ということを説明するなどしてモチベーションの向上を図っているでしょう。学習マネジメント塾でもそれはやりますが、単に生徒のやる気を向上させるだけではなく、以下のような試みをしていきます。
勉強を日常生活の一部にまで仕組み化する
学習マネジメント塾では、生徒に強い意志を身につけてもらうという発想ではなく、「仕組み化」によって継続的な学習を実現します。具体的には、当塾では一般的な学習塾の形態ではなく部活動に近い活動をすることで「勉強」という行為を「学校に行く」「歯を磨く」などと同じように「毎日やって当たり前の行動」として仕組み化します。それによって意志の力だけでは到底実現できないほどの継続が可能になります。
小さな成功体験を積み重ねる
「仕組み化」によって継続を維持することができれば、成果は必ず出てきますし、短時間の勉強であっても”何日連続で継続した”ということを見える化することにより、しっかりと達成感を感じることができるようにしていきます。また、勉強の継続を維持することで「理解できなかったものが理解できるようになった」「テストで良い点数を取れた」などの成功体験を少しずつ積み重ねることができるので、それによって自信がつき、更に上の成果を達成しようという「プラスを得るための行動」を増やすことができます。
生徒同士を”適度に”競わせる
学習の効率を上げるためには生徒同士を競わせることも必要です。ただ、ここで気をつけなくてはならないことは、過剰な競争にならないようにすることです。過剰な競争をすると、落ちこぼれる生徒が必ず出てきますし、自分よりも遥か先を行く生徒を見ていると、やる気を無くしてしまいます。そうなると、その生徒は「落ちこぼれるのが嫌だから勉強する」という典型的な「マイナスを避けるための行動」として勉強をすることになってしまうため、”適度な競争”を行う必要があります。
例えば、成績や学習量ではなく、短時間であっても学習を継続した日数などで競わせる、ということを考えています。そのような形であれば、生徒は「自分も頑張ればあれぐらいはできるはずだ。もっと頑張ろう!」と考えることができます。その刺激によって「プラスを得るための行動」を増やすことができます。
学習マネジメント塾では、まず生徒に自分が行うあらゆる行動を「プラスを得るための行動」と「マイナスを避けるための行動」のどちらで行っているかを意識させて、より良い行動原理で動くことができるようにしていきます。そしてそれを続けていけば、勉強だけではなく仕事、恋愛、友人関係、家族関係などを改善させていくことができるはずです。