仕事においても勉強においてもそうですが、何かに依存し、決定権を委ねるような形で頼ろうとすると、物事はうまく進まなくなります。では、どのような考え方をすればいいかというと、頼るのではなく、その相手を上手く使おうという考え方です。これは一見すると非常に傲慢な考え方のように見えますが、このような考え方をしてる方がうまくいくことが多いのです。

 

周囲の人や組織をツールと考える

相手をうまく使う、活用すると考えるということは、周りの人間を一種のツールとして考えるということです。これは相手を馬鹿にしたり、見下したりする考え方とは違います。”頼ろう”という考え方は、主導権を相手に委ねている状態ですが、”使う”という考え方は主導権を自分が持っている状態です。つまり主体性を持っているということです。物事をうまく進めるためには、相手に対する感謝や敬意を持った上でそのように考える必要があるのです。

これは目上の人や所属組織であっても同じことです。例えば、会社組織での仕事において他部署の部長を説得しなくてはならない状態になったとします。自分が役職の無い社員の立場だった場合、まずは自分の部署の課長や部長に事情を説明し、他部署の部長を説得するための協力を得られるように依頼するでしょう。相手側の部署の部長も、他部署の社員一人から説得されるよりも、自分と同じ職位の部長から話を持ちかけられた時の方が遥かに真剣に聞くはずです。これは上司の存在を利用しているということになりますが、正当な行為であり、何も問題はありません。

この時、上司に”頼ろう”という考え方をしていると、上司に「私の代わりに説得して下さい」という意識になってしまいます。ですが、上司の存在をうまく”使おう”と考えていれば「上司の存在はあくまで説得をしやすくするための後ろ盾であって、説得は自分でする」という意識になります。上司の立場だった場合、部下にどちらの考え方でいてくれることを望むでしょうか?大多数の人が後者だと答えるのではないでしょうか。

これは組織が相手でも同じことです。会社組織に頼ろうと考えている人はいつまで経ってもその組織を支えることができません。それよりも、その会社に属していることで使える権限や信用を大いに活用しようと考える人の方が活躍できるのです(会社を辞めて独立する可能性も高いですが)。

 

“使う“という考え方でリスクを低減させる

他人や会社に頼り切っている人は、その相手が破綻したり、突然いなくなった時に自分も破綻することになります。これは大きなリスクだと言えるでしょう。それに対し、相手を”使う”という考え方であれば、その相手を失った時に多少不便を感じる程度で済みます。つまり、”使う”という考え方の方がリスクを低くすることができるのです。それに、その考え方の方が相手側の負担も少なくて済むはずです。

人に頼られるのは最初は気分の良いものですが、いつまでも誰かが自分に頼りきっていたら、そのうち嫌になるでしょう。夫婦関係でも、配偶者から「あなたがいなければ、生きていけない」と言われた場合、最初は嬉しく感じるかもしれませんが、そのうち大きな負担になりますし、もし自分が病気なので働けなくなった時に生活が破綻するリスクが大きくなります。

そのため、家族であっても過度な依存はせず、お互いの存在を活用し合うという考え方の方が最終的にはうまく行くのです。これを無理矢理言語化すると「各々が自分の人生の主導権を持ち、それぞれの人生をうまく進めるために協力し合う」ということです。これは以前の記事でも書いたように、アドラー心理学における課題の分離の考え方だと言えるでしょう。

 

私自身のビジネスと生徒との関係性

私の話をすれば、私は自分のビジネスを起ち上げるにあたり、様々な人やコンサルタントから助言を貰いましたが、その人たちに頼ろうとは絶対に考えませんでした。私は現在も定期的にコンサルタントに相談していますが、その人は自分が知らない知識やノウハウを提供してくれる存在として活用しようとしか考えないようにしています。そのコンサルタントの方も起業家なので、そのようなことは百も承知でしょう。ビジネスでは、その様な一切甘えの無い関係の方がうまくいくのです。

また、ビジネスを起ち上げる際に一緒にやる仲間も持たないことに決めていました。共同経営者のような同じ立場の仲間を持ってしまうと、どうしてもその仲間に頼ろうという気持ちが生まれてしまうからです。ビジネスは仲間と一緒に始めると失敗するということは多くの起業家が言っていますが、私もその通りだと思います。起業するということは、自分が全ての責任を持ち、常に自分が主導権を持つ覚悟が必要です。そのため、誰かを頼ろうと考えたら終わりなのです。

そして、私は当塾の生徒も同じように考えてくれることを望んでいます。つまり、生徒には当塾も私(木山)のことも頼る相手ではなく、自分が使用するツールだと考え、責任と主導権は全て自分が持つという覚悟を持って欲しいのです。これは「生徒への愛情」や「血の通った教育」などとは対極の考え方ですが、マネジメントは「誰かが何とかしてくれる」という甘えた考えを徹底的に排除し、全ての責任を自分が持つと考えなければうまく行かないのです。

ですが、もちろん感謝と敬意は持たなくてはなりません。マネジメントを行うためには、周囲の人たちや組織に対し感謝と敬意を持ち、その上でそれらをツールとして活用するという一見矛盾しているような考え方をする必要があります。高校生の生徒さんには少し難しいものがあるかもしれませんが、マネジメントを成功させるためには、このような考え方が必要だということだけでもご理解頂きたいです。