私が人間関係において、絶対にやってはいけないことの一つに「相手の不快な過去を持ちだす」ことがあります。普通に生きていれば、大抵の人が過去に失敗・恥・過ちなどの思い出したくない出来事を抱えているものです。それを知っている人が何の関係も無い場面でそれを持ち出して、責めたり嘲笑したりした場合、私ならその人には二度と会いたくありません。「相手の不快な過去を持ちだす」という行為は人間関係を一瞬で破壊する最悪の行動だと言って良いでしょう。
人の恥や失敗を持ち出すと人望を失う
私は大学生の時に、ある教授の研究室で勉強と研究をしていたのですが、ある時、私がちょっとした質問を教授にした時、教授は「それだったら講義の時に話したよ、君は寝てたから聞いてなかったんじゃないの?」と言いました。確かに私はその教授の講義の時につい居眠りをしてしまったことがありました。それは事実です。しかし、何の関係も無い場面でそのことを持ち出す必要は無いはずです。正直、私はその瞬間にそれまでその教授に抱いていた尊敬の気持ちも全て吹き飛びました。ちなみに、その教授は後にかなりの数の学生に逃げられたという話を聞きました。
また、私が中学生の時の担任は事あるごとにクドクドと嫌みな説教をしてくる教師でしたが、その教師は説教をしている時にしょっちゅう「そう言えばお前はこの間も~」などと過去のことを持ち出して叱る理由が二転三転するような人でした。叱る時のルールの記事でも書きましたが、叱る理由がコロコロ変わるのは人を叱る時に最もやってはいけないことの一つです。もちろんその教師は皆から嫌われていました。
大学生の時の教授と中学の時の担任はどちらも生徒からは全く人望がありませんでした。その理由は色々あるでしょうが、過去のことを持ち出して責めたり嘲笑したりするような行為をしたことが非常に大きな要因だったと私は考えています。
本当のことであっても言ってはいけない
人の過去の失敗・恥・過ちなどを持ち出して責めたり嘲笑したりする人は「本当のことを言って何が悪いんだ」と考えているのかもしれませんが、本当のことであっても言ってはいけないのです。想像して頂きたいのですが、自分の過去の失敗を何の前触れもなく持ち出すような人と一緒にいるということは、いつ爆発するか分からない爆弾を抱えているようなものです。そんな状況では不安や恐怖などの大きなストレスを感じることになりますので、そんな人と一緒にいたくないと考えるのは当然です。
そして、人の不快な過去を持ち出すような行為をしていれば、それをされる人もひどく不愉快ですが、何よりそれをする人が一番不幸になるのです。上述した教授の場合は必死に勉強や研究を頑張って教授と言う地位を手に入れたにも関わらず、人間関係の悪い癖を直さなかったために人望を失い、学生に逃げられるような目に遭っているのです。それまで努力が水の泡とまでは言いませんが、本来得られるはずのものを大幅に失っていたことは間違いないでしょう。
つまり人の不快な過去を持ち出すという行為は、人も傷つけ自分も不幸にするまさに最悪の行動だと言って良いのです。
忘れてくれる人とは清々しく付き合える
逆に、自分の過去の恥・失敗・過ちなどを全て忘れてくれる人とは、とても清々しい気持ちで付き合っていけます。例えば、自分が仕事で何か失敗をし、それによって上司に迷惑をかけてしまったとします。そして、その数日後に、そのことについて改めて上司に謝罪した時に、「それはもう既に終わったことなんだから、君が気にする必要はない。僕は君に言われるまでそんなことがあったことも忘れていたよ。」と上司が言ってくれれば、とても清々しい気持ちでいられますし、頭を切り替えて仕事に集中できるでしょう。
「それじゃあ失敗の反省ができないのではないか?」と思う人もいるかもしれませんが、正しい“反省“とはの記事でも書いた通り、失敗に対する”反省”とは失敗のリカバリーと再発防止の改善活動を行うことです。そして上司が行うべきことは、嫌味ったらしい説教をすることでも、過ぎたことを責めることでもなく、失敗のリカバリーと再発防止策の実施を指示することだけです。部下がそれらをやったら、その出来事自体は過ぎたこととして、スパッと忘れるべきです。
そもそも過去のことをいつまでも責められたら、過去に気持ちが捉われてしまいますが、どんなに悔やんでも過去を変えることなど出来ないのですから、未来を良くすることに集中した方が遥かに建設的です。上司にとっても部下がそのように考えてくれた方が多大なメリットがあるはずです。
人の過去の失敗・恥・過ちを持ち出すような行為は人間関係を破壊し、自身の人望や利益を大きく毀損する最悪の行動です。逆に人の不快な過去をスパッと忘れて未来に集中することが、人間関係を良くし、自分自身にも利益をもたらすために絶対に必要だと考えて間違い無いでしょう。