少し前に、アドラー心理学について書かれた「嫌われる勇気」という本がベストセラーになりました。その中で重要な概念として書かれていたのが「課題の分離」です。ですが、私はアドラー心理学を知る前から「課題の分離」で物事を考えるようにしていたと思います。ここでは、アドラー心理学の解説ではなく、私の中での「課題の分離」の解釈について紹介します。
私なりの「課題の分離」
私は、”自分の問題”と”人の問題”について以下のように考えています。
- 自分の問題に対する責任を人に押し付けない
- 他人の問題に対する責任を過剰に抱え込まない
これが私なりの「課題の分離」ですが、これらについて、私が普段どのように考え、どのように行動しているかを書いておきます。
自分の問題の責任を人に押し付けない
妻は毎朝私の朝食を作ってくれるのですが、たまに寝坊して朝食を作ってくれていないこともあります。ですが、私はそれを怒ったことはありません。これは私が優しいからだとか、寛容だからとかいうことではなく、「私の朝食が用意されていなくて困る」のはあくまで”私の問題”であり、”妻の問題”ではないと考えているからです。そもそも、私は朝食ぐらい自分で作ることもできますし、どうしても時間が無ければ出勤の途中にコンビニに寄ってパンやおにぎりを買って食べることもできます。つまり、自分の力でどうとでもなることについて、人に文句を言うのは時間と労力の無駄なのです。もし、私が妻に文句を言うとすれば、(有り得ないことですが)妻が育児放棄するなどして、子供に対する責任を放棄した時ぐらいです。
また、逆に私が妻の立場で専業主婦だったとして、もし夫が仕事をせずに遊び歩いていたとしたら、確かに多少文句は言うでしょうが、「夫が働かないせいで私は不幸だ」などとは考えません。何故なら、「お金が無くて困る」のは”私の問題”であり、”夫の問題”ではないと考えるからです。その場合は、子供を連れてさっさと夫と離婚をし、自分でお金を稼ぐ方法を考えるでしょう。そもそも、”自分の幸せ”などというものは自分の力で得るものであり、夫婦であっても自分の幸せに対する責任まで押し付けるのは筋違いです。
他人の問題に対する責任を過剰に抱え込まない
仕事で何か失敗をして上司を怒らせてしまったとします。その場合は上司に謝罪し、失敗のリカバリーと同じ失敗を繰り返さないための再発防止活動を行う必要がありますが、それをきちんとやったのであれば、私はもうそのことについてクヨクヨ悩んだり、「あの人まだ怒ってるかな?」などと考えてビクビクしたりはしません。何故なら、上司が怒る原因を作ったのは自分だったとしても、そのことについて「いつまでも怒り続けるか」「すぐに忘れてしまうか」のどちらになるかは上司の心の中の問題であり、自分がどうすることもできないと考えているからです。
私にできるのは、謝罪と失敗へのリカバリーと再発防止活動だけです。それ以外の一体何ができるというのでしょうか?上司に対して、「まだ怒ってるかな?」とか「あの人の怒りを鎮める方法はないかな?」などと考えるのは全く無駄なことであり、そんなことを考えて仕事への集中力が下がる方が上司にとっては迷惑なことでしょう。つまり、「人がどう思うか?」は”他人の問題”であり、”私の問題”ではないのだから、そのことを気にすること自体が無駄なことなのです。
教育における課題の分離
「勉強しなさい」がダメな理由という記事でも書いた通り、私は子供に「勉強しなさい」と言うことはありませんが、子供に「今日は勉強するの?」と質問するようにしています。また、「お父さんが言うから勉強するんじゃない。勉強するかどうかは自分で決めなさい。もし、お前が”勉強をしない”という決断をしたのであれば、しなくても良い。ただし、その結果の責任は自分で取りなさい。」と子供に教えています。これは、「勉強をするか」はあくまで”子供自身の問題”であり、”親の問題”ではないという考え方を小さい頃から教えておく必要があるからです。
もし、私が子供が勉強をしないことに怒るようなことをしていたら、子供は「親に怒られないこと」が勉強をする目的にになってしまいます。そして、私に対して「お父さんは怒っていないか?」とか「お父さんの怒りを鎮めるにはどうすれば良いか?」などという無駄なことばかり考えることになってしまいます。そうなれば、本来の自分の問題に集中できなくなってしまう上に、「人の感情」などという自分では制御できないようなものに振り回される考え方が身についてしまうでしょう。
学習マネジメント塾での生徒の指導でも、この「課題の分離」に基づいた考え方をします。すなわち、「親や塾の講師が言うから勉強する」などという考え方を完全に排除し、勉強はあくまで”生徒自身の問題”であるということを徹底的に教え込むのです(詳しくはマネジメントを行う上で絶対に必要なもののページに示してあります)。「課題の分離」によって、”自分自身の問題”への責任を徹底的に取ることと、”他人の問題”への責任を抱え込まないことを身に付けることができれば、ストレスを大幅に軽減することができ、勉強や仕事の成果を最大化することに繋がると私は確信しています。