無責任な考え方をする人の思考パターンの一つとして、「自分は被害者だ」という考えがあります。世の中には本当に全く責任が無い完全な被害者もいますが、「自分が~なのは、○○の責任だ。自分は○○の被害者だ!」というような考え方は間違いなく責任を回避するための言い訳でしかありません。このような被害者根性を持っていると、仕事も勉強も人間関係もうまくいかなくなります。
“被害者“とは無力な存在
私は小学生の頃、一部の上級生から嫌がらせを受けたことがありました。最終的に彼らは大人から叱責されることになったのですが、その時に私は大人から「君は被害者なんだから気にしなくて良いよ」と言われたことに強い違和感を感じました。その時はその違和感の正体には気づかなかったのですが、要するに私は「君は無力な人間なんだから仕方ないよね」と言われた様に感じ、それがひどく不快だったのです。
「自分は被害者」と考えてしまうと「自分は無力」だということを受け入れることになり、自信や決断力を失ってしまいます。そうなれば、現状を改善することができなくなるのです。例えば、夫のDVに苦しんでいる女性がいたとします。その人は確かに夫のDVの被害者ではあるのですが、その人自身が「私は可哀想な被害者」と思っていると、「自分は何もできない無力な人間」と思い込んでしまい、自分から何も行動できなくなります。DVをする夫を何とかしたいのであれば、夫をDV治療の専門医に連れていくとか、DVの証拠を集め、弁護士を雇って離婚するなどの具体的な行動を起こせば良いのです。
被害者であることが事実であっても、被害者意識による無力感の中に引きこもっていては何も解決しません。そのため、現状を変えるための行動を起すためには、まずこの被害者意識を捨て去る必要があるのです。
被害者でいるために加害者を作り出すこともある
被害者という立場が欲しいために、自分からいもしない加害者を作り出すということもよくあります。と言うのも、“被害者”という立場は行動できない、したくない人によってはとても都合が良いのです。「自分が成功できないのは○○のせいだ!」と言うことができれば、「○○さえ無ければ、自分は成功していた」と言うことができ、行動せずとも少なくとも自分の中では自分の価値(と本人が思っているもの)を維持することができるのです。
例えば、「親が貧しくて学費を出してもらえなかったから、自分は成功できなかった。自分は親の被害者だ!」と言っている人がいたとします。しかし、世の中にはそれこそ親から虐待されていても、その心の傷を克服して成功をおさめる人もいます。つまり、その人は自分が成功できない、あるいは成功に向けて行動しない理由付けをするために、親を加害者に仕立て上げているのです。これは自分の人生の責任を親に押し付けているとも言えます。
このように、無責任な人は自分の責任を人に押し付けるために勝手に加害者を作り出すのです。
テレビドラマで描かれた被害者意識
綾野剛さんが主演の「ハゲタカ」というドラマの第7話で非常に印象的な言葉がありましたので、紹介させて頂きます。以下は、大手から下請け契約を解除された企業の代表の天宮光一がサムライファンド代表の鷲津(綾野剛)に資金援助を求めた際のやり取りです。
天宮:鷲津さん 僕らが羽ばたくためには誰かの助けが必要なんです!
一緒に夢を追いかけてくれる人が。
あなたの話を聞いて「この人なら…」って思ってたんですよ。わかります?
ああ… そうですよね。結局 あんたみたいに大金を動かしてるような人間は
僕らみたいに 力もない金もないような人間の気持ちがわからないですよね?
こっちはね 会社がなくなったら生きていけないんですよ。
この天宮という人物の発言からは、「自分のような無力な人間を助けてくれない周りが悪い」という考え方が見て取れます。これは明らかに自分が被害者になることで、周囲に責任を押し付けようとする考え方です。
マネジメントを行う上で絶対に必要なもののページで詳しく書きましたが、こう考える人は全てを他人任せにした挙句、うまくいけば依存し、うまくいかなければ責任転嫁するのです。このような被害者根性丸出しの考え方をしている時点で成功できるはずがありません。
学習塾の生徒の被害者意識
学習塾はお金を支払って通うものなので、支払っただけの対価としての成果(一定以上の成績や志望校への合格)を求めるのは自然なことです。ですが、勉強をするのは生徒本人である以上、最終的な責任は生徒自身が取らなくてはなりません。これは当塾だけがそうなのではなく、生徒の代わりに責任を取ることは世界中の誰にもできないことです。
「あの塾の指導がダメだから自分の成績が上がらない」という意見は良く聞きます。確かに教える人の技量に優劣があることは事実でしょうが、このような意見の根底には「自分は塾のダメな指導の被害者だ」という考えがあります。このような「無力で可哀想な自分を誰かが助けてくれるはず」という他人任せの考えと「助けてくれない周りが悪い」という被害者根性を持ち続けていること自体が、塾の指導内容以前に大問題です。
更に、このように考える生徒は、最終的な目標が「成績を上げること」や「志望校の合格」ではなく「責任の回避」になっている場合が多いのです(詳しくは、自分は何を目指しているのか?のページを参照)。責任を回避することを最終目標として、「誰も自分を助けてくれない」と被害者意識の中に閉じこもって行動しないのでは、成果など永久に出ません。
そのため、当塾では、具体的な学習の指導以前にこの被害者根性を徹底的に捨て去ることが何よりも重要だということから教えていきます。