学校の勉強では頭の良い生徒が良い成績を取りますし、受験でも頭の良い生徒が受かることになります。しかし、仕事においては必ずしも頭の良い人が勝つとは限りません。と言うのも、仕事においては頭の良さ以上に行動力がものを言う場合が多いからです。そのため、行動力のあるバカが頭が良い人に勝つ場合も結構あります。

 

行動力がある人は多くの情報や経験、そしてチャンスを得られる

例えば、職場で何か新しい企画を募集していたとします。その時に、頭は良いけれど行動力に欠けるA君と頭の出来はイマイチだけれど行動力のあるB君がいたとします。A君は「まだ自分は未熟なので、十分な完成度の企画書を書けるようになってから出そう」と考え、結局何も行動を起こしませんでした。B君は完成度などはあまり気にせず、自分なりの企画書を作ってさっさと上司に提出しました。この場合、A君とB君のどちらが評価されるかと言えば、圧倒的にB君の方が評価されるでしょう。

仮にB君が提出した企画書が話にならないような完成度のものであったとしても、まともな上司であれば頑張って企画書を作ってきた部下を無下には扱わないはずです。おそらく企画書を書く上での見落としや改善すべき点を指摘するなどして指導をするでしょうし、その企画をブラッシュアップするのに必要な情報を提供したりするはずです。つまり、恥を恐れず行動を起こした人間は、知識や経験を蓄積した人からのフィードバックや有用な情報を得ることができるのです。

そういった情報や経験を得ながら、何度も企画書を書き直していけば、B君はそのうち採用されるレベルの企画書を作れるようになる可能性もあるでしょう。つまりそれだけのチャンスに恵まれるということです。これは最初に何も行動を起こさなかったA君にはできないことです。

 

能力があるから行動するのではなく、行動するから能力が身につく

上記のA君のように「十分な完成度のものを作れるようになってから行動しよう」と考える人は結構多いです。これは「能力⇒行動」という考え方ですが、実際には行動を起さなければ能力は身につかないのです。つまり「行動⇒能力」という順番が正しいのです。

以前、「ドラゴン桜」で有名な漫画家の三田紀房氏のエッセイを読んだことがありますが、三田氏はその中で以下のように書いていました。

  • 漫画家志望だと言う若者に会った時に「じゃあ君の作品を見せてくれ」と言ったが、彼は「まだ作品を描いたことはありません。きちんと漫画の描き方を勉強してから描きたいのです。」と言っていたのを聞いて呆れた。
  • 漫画など紙と鉛筆があればいくらでも描けるのだから、勉強うんぬん言う前にどんどん描いた方が良いに決まっている。
  • 完成度の低いものを描きたくない、人に見せたくないと言って行動を起こさない人間が成功に近づけるはずがない。完成度など気にせずどんどん漫画を描く方がはるかに成功に近づける。

なお、三田氏はそのエッセイの中で「僕は絵が下手だ」と書いていました。自分で絵が下手だと思っているのに、そんなことを気にせずに漫画を描き続けて大きな成功を得た三田氏だからこそ、行動することの大切さを強く実感しているのでしょう。

私の話をすれば、私も自分の文章力に絶対の自信があってコラム記事を書いている訳ではありません。ですが、完成度80%の仕事の記事でも書きましたが、完璧なものだけを出そうなどとは考えずに、毎日書きまくって、どんどん公開していけば、文章力など後から身につくものだと半ば開き直って書いているのです。そのような一種の開き直りが無ければ、自分の作品や自分の意見を世間に公表することなど出来ないでしょう。そして、それが出来ないということは永久に反響は得られないということです。

 

行動力で頭の良さを補うこともできる

ここまで書いてきた通り、行動力があれば多くの情報や経験を得ることができるため、それによって自身の能力を伸ばすことができます。また、行動力があれば能力の高い人に力を貸して欲しいと頼むこともできますし、頼まれた側も自分からどんどん行動を起こす人であれば助けようという気持ちになりやすいものです。つまり、行動力によって頭の良さをある程度補うことも出来なくはないのです。しかし、行動力の無さを頭の良さで補うということはできません。

そのため、上司の立場のとしては、頭が良くても行動力の無い部下よりも頭の出来がイマイチでも行動力のある部下に期待する人が多いように思います。少なくとも、私が上司の立場であれば、そのように考えます。と言うのも、知識や判断力は経験を積むことで自然に身につけることができる場合が多いですが、行動力はなかなか自然に身につくものではないからです。

ただ、物事には限度があり、あまりにも無鉄砲に行動するバカが部下にいることのリスクも当然存在ます。そのような場合は、きちんと教育をして節度や判断力を身につけさせなくてはなりませんが、行動力の無い部下に行動力を身につけさせるよりは容易だと言えます。

 

世の中では、頭が良ければどんなことでもうまくいくと考えている人もいますが、実際には頭が良いだけではうまくいかないことの方が多いのです。何故なら、頭が良くても行動できなければ意味が無いからです。無論、行動にはリスクが伴いますが、特に新人の頃に抱えるリスクなどそう大きくは無いので、最低限のリスク管理さえ出来ていれば、多少のリスクなど気にせずにどんどん行動した方が確実に成功に近づけるでしょう。