世の中には理解できないものが多くあります。この”理解できないもの”を”自分の理解を超えた高度なもの”だと思い込んでしまう人が多いように感じますが、これは危険な考え方だと言わざるを得ません。
理解できないのは大抵は説明する側の責任
学術論文や数学の証明のようなものは知識を持った人間にしか理解できないものです。ですが、それ以外の大抵のものは普通の知力を持った人が理路整然した説明を受ければ理解できるはずなのです。
例えば医療の世界では患者に治療内容を説明して同意を得るインフォームドコンセントという考え方が広まっています。医療は高度な専門知識が必要でありますが、その治療内容の説明は患者にも理解できるように分かり易い言葉で説明しなくてはなりません。「どうせあんたに話したって理解できないだろ!」というような態度でまともに患者の同意も得ずに治療を進めた場合、訴訟に発展することすらありえます。つまり、高度なものであっても、きちんと整理して理路整然と説明すれば、理解できるはずなのです。理解できないのは、多くの場合説明する側に責任があるのです。
私は、理解できないものは以下の三つのどれかであると考えるようにしています。
- 難解なもの(例:学術論文、数学の証明など)
- 説明が下手
- そもそも支離滅裂
ここでは、学術論文や数学の証明などの難解なもの以外の二つについて書いておきます。
理解できない理由1:説明が下手
仕事をしていると、報告書を読むこともありますが、下手な報告書は何が書いてあるのか、どうしてそのような結論になるのか訳が分かりません。経験が浅い頃は「自分の知識や理解力が足りないから分からないのだろう」などと考えていましたが、私が分からないものは、経験豊富な上司や先輩も分からないと言うケースが多かったです。私も新人の頃は「君の報告は分かりにくい、もっと整理して報告しなさい」と言われたことがよくありました。同じようなことを上司や先輩から言われた人も多いのではないでしょうか?
報告書に限りませんが、読み手が「理解できない」と感じるものは、多くの場合書き手が下手だからです。それは例えば必要な説明が無いとか、内部でしか通じない用語を使っているとか、同じ意味で複数の文言を使用しているとか、根本的に文章力が無いなどです。そういった書き方をされると、どんなに頭が良い人間が読んでも理解できないものになってしまうのです。
理解できない理由2:そもそも支離滅裂
統合失調症のような病気の人を除けば、支離滅裂な話をする人というのは「まず結論ありき」で話す人です。と言うのも、普通は”理由”があって”結論”が出てくるのですが、結論ありきで話をする人は、自分にとって都合の良い”結論”を決め、そこに合うような”理由”を無理やり持って来るからです。以下、結論ありきで支離滅裂な話をする人の例を書いておきます。
カルト宗教の教祖
カルト宗教の教祖は、多くの人に「入信してもらう」ことや「たくさん御布施をしてもらう」ことが目的です。そのため、「この神を信じれば幸せなれる」ということや「たくさん御布施をすれば天国に行ける」というような話をしますが、どう考えても何の根拠も無い話です。
偏向報道
新聞やテレビの報道も多くが「結論ありき」で無理やりそこに合う理由や理屈を並べたものが多いため、支離滅裂で理解不能になるケースがかなり見られます。新聞やテレビの報道が偏向しているということは今の時代ではほとんどの人が知っていますが、一昔前は「新聞に書いてあるんだから本当だろう」とか「立派そうな人がテレビでそう言っていたから本当だろう」と信じてしまう人も多かったのではないでしょうか。
モンスタークレーマー
相手に賠償させたり、支払いを拒否するために滅茶苦茶な理屈を並べるモンスタークレーマーがたまにいますが、こういう人は論外です。
無責任な人
無責任な人はとにかく「自分のせいじゃない」ということを主張したがります。そのため、「~だから俺は悪くない」とか「~をしたあいつが悪い」というようなことを無理やりこじつけて話しますが、言うまでもなく、その主張は大抵が支離滅裂で理解不能なものです。
人は、つい「理解できないもの」に対して「自分の頭が悪いからだ」とか「何かすごいものなんだろう」とか考えがちですが、理解できないものは、「説明が下手」か「結論ありきで支離滅裂になっている」かのどちらかだと疑ってかかった方が良いでしょう。そのようにしていれば、支離滅裂な論理に振り回されたり、胡散臭いものに騙されたりする危険性はかなり減るはずです。