“有意義に過ごす”ということは時間を大切にすることであり、間違いなく大切なことです。ただ、人は時に「有意義に過ごさなくては」という自分へのプレッシャーのために生き辛さを感じたり、本当に大切なものを見失ってしまうことがあります。

 

“有意義に過ごす”ことへのプレッシャー

私は普段から有意義に過ごすことを心がけている方ではありますが、それが自分にプレッシャーを与え、本当にやりたいことをできなくさせているように感じることもあります。

例えば、私は映画は好きな方なのですが、いずれ観ようと思って観ていない映画がかなりあります。それならさっさと観れば良いじゃないかと思うでしょうが、実際に観てつまらなかった時に時間を無駄にしてしまうのが嫌なのです。しかし、実際に映画を観て「すごく面白いな。もっと早く観れば良かった。」と思うこともあります。

これは映画だけに限った話ではなく、「いつかやりたい」と思っていながら時間を使いたくないためにやっていないことが他にも幾つかあり、それらをやっていれば、より人生が豊かになったかもしれません。これは損にビビッて自分の”時間”を投資ができないために本来得られるリターンを取り損ねている状態であり、そういう点では、人生を損している気がするのです。

時間を大切にすることは確かに大事なのですが、”有意義に過ごさなくてはならない”といプレッシャーが強いために逆に損をするのであれば、時には”無為な時間”を持つのも良いのではないかと最近思うようになりました。

 

時には無為な時間も必要

“ゲゲゲの鬼太郎”で有名な漫画家の水木しげる氏は「無為に過ごす」ことを大事にし、仕事が忙しくても睡眠時間はしっかり取るようにしていたそうです。結果、水木氏は90歳を超えても連載を持ち、93歳まで長生きしました。同じ時代の漫画界の巨匠・手塚治虫氏は命を削って漫画を描き続け、膨大な量の作品を残しましたが、60歳で亡くなりました。水木しげる氏と手塚治虫氏のどちらの生き方が正しいかは価値観の問題ですので一概には決められませんが、多くの人は水木氏のような生き方を望むのではないでしょうか?

また、子供が漫画を読んだりやゲームをしながらダラダラ過ごすことには否定的な人は多いですが、私はそういった時間を過ごすことが必ずしも悪いとは思っていません。小学生の頃は一日中漫画を読んだりゲームをしていても全く後悔することなど無かったですが、大人になるとダラダラ過ごした後に後悔を感じることが多くなります。つまり、心置きなくダラダラ過ごせるのは、子供の特権なのです。もちろん、そればかりしていて勉強をしないのはダメですが、たまの休日にそのような過ごし方をするぐらいなら良いでしょう。もちろん大人もたまには意図的に”無為な時間”を持つ方が心の健康にも良いのではないでしょうか。

 

どうしても無為に過ごすことが苦痛な人は

どうしても無為に過ごすことに強い焦燥感や苦痛を感じてしまう人もいるでしょう。そういう場合は、何か別の目的に使っている時間を活用するのが良いです。ここでお勧めなのは”移動時間”です。移動時間には”移動”という別のことに使用しているため、無為に過ごしても後悔することが無いという安心感があります。

私は、電車通勤をしていた時は、読書をしたり好きな芸人のラジオ番組を録音したものを聴いたりして過ごしていましたし、車での通勤の時はオーディオブックで本を聴きながら過ごしたり、Youtubeの講義系動画を聴きながら過ごしています。制約があることの良さの記事で書いたことにも繋がりますが、移動のために使わなくてはならない時間という制約があるからこそ、心おきなくその時間を使うことができるのです。

遠距離の国内旅行の際に飛行機ではなく、フェリーや寝台列車を好む人もいますが、そういう人はあえて移動時間を長く取ることで旅行中の”有意義に過ごさなくては”というプレッシャーを軽減したいという気持ちがあるのではないでしょうか?大抵の人は、旅行先に着くと「あの観光名所を見ないと」とか「あの店で美味しいもの食べないと」というようにスケジュールに追われるような過ごし方をしてしまいます。確かにそれも楽しいかもしれませんが、そのプレッシャーを煩わしく感じることもあるでしょう。そういう点では、そのプレッシャーが無い移動時間をあえて長く取り、その時間で”無為に過ごす”ことも楽しいのではないかと思います。

 

“無為な時間”は”無駄な時間”とは違います。私も風が気持ち良い高原などで一日中ボーっと雲が流れるのを見続けて過ごすようなことをしてみたくなることもあります。ですが、これは”無駄な時間”でしょうか?本当に高原で一日のんびり過ごせば、意外と気持ちがすっきりして充実感を感じるかもしれません。

一番無駄なのは”有意義に過ごすためにどうすべきか”と考え込んでいる時間です。そんなことに悩んでいる時間があれば、「有意義でなくても良いので、自分がやりたいことをして過ごす」と決めて行動するべきでしょう。それができれば、私を含めた大勢の人が人生をより豊かにできるのではないでしょうか。