人は勉強にせよ、仕事にせよ何かを行う際に、常に自分の人生の最終目的を意識する必要があります。これについては、自分は何を目指しているのか?のページで触れていますが、今回はより掘り下げて書くことにします。

 

最終目的を見失うと

人生の最終目的を考えることはスティーブン・R・コヴィー博士の「七つの習慣」の中で第二の習慣”終わりを思い描くことから始める”として詳しく書かれています。「七つの習慣」の中でコヴィー博士は、仕事に追われている人は「活動の罠」にはまることがあると書いています。つまり、現在の仕事を能率よくこなすことばかりに集中するあまり、何のために仕事をしているのかを見失ってしまうということです。

例えば、出世のために仕事をし続けた人がいたとします。その人は出世することが人生の目的であり、仕事に人生の全てを捧げた結果、非常に高い地位まで出世しました。ですが、家庭を省みなかったため、家族との関係が希薄となり、妻との関係は冷え切り、子供たちとも他人同然の状態となってしまい、お金はあっても孤独な老後を過ごすことになりました。その時になって、「自分は何のために仕事を頑張ってきたのだろうか?」と後悔することになるということです。

また、人生全体のような大きな話ではなく、仕事の一部であっても本来の目的を見失うことはよくあります。例えば、製品の品質を向上させるために品質を数値化できるような指標を作ったとします。その品質指標に基づいて、品質改善活動を続けていたら、次第に品質指標の数値に影響が大きい部分だけしか改善活動を行わなくなったり、品質指標の数値が改善するようにデータを改ざんしたりするようなことが起こったとします。これは「品質指標を改善させること」が目的となってしまい、本来の目的である「製品の品質改善」を見失ってしまっている状態です。実際の仕事においてこのような事例に心当たりがある人も多いのではないでしょうか?

仕事だけでなく、勉強や人間関係でも本来の最終目的を見失ってしまうと、うまくいかなくなるのです。

 

最終目的として何を目指すべきか?

では、自分自身の人生の最終目的として、何を目指すのが正しいのかということですが、人の価値観は千差万別であるため、万人共通のものを定めることは難しいです。ですが、無理やり言語化するのであれば、私は人生の最終目的は「豊かで幸福な人生を送ること」ではないかと思います。“豊かで幸福な人生”というのもあいまいな部分が多いですが、「衣食住に困らない程度の収入がある」「一定以上の社会的評価を得ている」「孤独ではない」「不安が少ない」というような要素を満たしていることが必要だと言えるでしょう。特に”豊かさ”、つまり収入は重要です。

私も以前は、芸人や歌手などを目指している人が夢を叶えられずにボロアパートの一室で人生の最期を迎える時に「夢は叶わなかったが、夢を追い続けることができて満足だ。」と思って死んでいけるのであれば、それも幸福ではないか、と考えていました。ですが、やはりそのような状況に置かれたら、どのような人でも後悔するのではないかと今は思うのです。そのような生き方を選んだ人を否定するつもりはありませんが、とてもお勧めできる生き方ではありません。

俗な考えだと思われるかもしれませんが、社会で生きていくためには”豊かさ”を求めることを避けることはできないのです。

 

勉強の最終目的は?

勉強を頑張っている高校生に「何のために勉強をしているのか?」と訊けば、ほとんどの生徒が「志望大学に合格するためです」と答えるでしょう。それ自体は大きな問題は無いと思います。高校生の頃から「豊かで幸福な人生」を目標に動いている生徒などほとんど居ないでしょう。「自分が頭が良い」ということを最も分かりやすい形で証明したいとか、周りの人に凄いと言われたいとか、過去に自分を馬鹿にした人間を見返したいというようなことでまずは十分です。

ですが、「志望大学に合格すること」が最終目的だった場合、志望大学に合格した後に目的を見失ってしまうことになります。そのため、大学受験のために勉強している時であっても、最終目的は「豊かで幸福な人生を送るため」に勉強しているのだということを意識させ、一つの目標を達成した時に、人生の最終目的に基づいた新しい目標を見つけることができるようにならなければならないのです。それを怠った場合、大学合格と同時に燃え尽きて中退したり、大学を卒業しても「やりたい仕事が無い」まどと言って働かない高学歴ニートになってしまう可能性もあるのです。そんなことになってしまったら、本末転倒でしょう。

 

では、最後に島本和彦氏の熱血漫画「逆境ナイン」の中の名言を紹介させて頂きます。

できる男は目標に到達してもふり返らない!その先にまた新たな目標が見えてしまうからだ!!できる男にふり返ってるヒマなど――ないっ!!!