人を無視するということはやってはいけないことです。しかし、無視した方が良い感情というものがこの世にはあります。それは”敵意”です。人から敵意を向けられた場合は、それを意図的にスルーした方が良いのです。何故なら、敵意というものを受け取ってしまうと、相手にも敵意を返してしまうことになり、相手との対立関係ができてしまうからです。
これは”あえて空気を読まない”と言い換えることもできます。以前、渡辺淳一氏の「鈍感力」という本が話題になったことがありますが、人からの敵意や誹謗中傷などのマイナスな感情には徹底的に鈍感になり、可能な限り受け取らないようにすることが自分の心を平穏に保ち、人間関係を良好に保つことにも繋がるのです。
敵意には笑顔で返す
私は基本的に人の敵意は一切受け取らないように心がけています。そのため、叱られた時は「自分のためを思って叱ってくれているのだろう。それだけ自分に期待してくれているんだ。」と考えるようにしています。文句を言われた時は「改善のためのヒントをくれているのだ。」と考えるようにしています。叱られたり、文句を言われた時にも落ち込んだり腹を立てたりせず、感謝の気持ちを持って笑顔で対応することができれば理想的だと言えるでしょう。
私は以前、仕事のやり方について先輩から文句を言われた時に「ご忠告ありがとうございます!では、今後はこのようにします。」と仕事のやり方の改善案を提示しました。また、新人の頃「君、そんなことも知らないの?」と言われた時に「大丈夫です。そんなことも知らなかったのはついさっきまでです。今の僕は知っているんですから、もう”そんなことも知らなかった僕”は居ないんです。だから何の問題もありません!」と言いました。
相手の文句や嫌味に対して「あいつムカつく~」などと陰口を叩くようなことをするより、笑顔で元気に対応した方が遥かにメリットがあるのです。
まず、私自身の心を明るく積極的に保つことができます。文句を言われてもすぐに改善案を提示すれば、その瞬間に私の心の中で、私は「仕事のやり方に文句をつけられた人」ではなく「積極的に業務改善を提案した人」になることができます。また、嫌味を言われた時に「それを知らない自分はもう居ないから大丈夫です。」と言えば、「嫌味を言われるような自分は既に過去のものであり、今の自分はそこから成長している自分なんだ。」と思うことができるのです。
そして、もう一つの大きなメリットは、このように対応すれば敵を作らなくて済むということです。文句を言った相手がすぐに「分かりました。ではこのように改善します。」と笑顔で言ったり、嫌味を言った相手が「もう大丈夫です」と元気に言って来た場合、相手をアホだと思う人はいるかもしれませんが、不愉快に感じる人はまず居ないでしょう。
つまり、自分も相手も不愉快にならず、敵を作ることもなく、明るく積極的に生きることができるのです。私は誰にアホだと言われようと、この考え方で生きることがベストだと確信しています。
人には”正しい叱られ方”がある
Youtubeで悩み相談に答えている大愚和尚というお坊さんが居られます。ある動画で、同居している姑からの電気の消し忘れなどの細かい小言に悩んでいる女性に対して大愚和尚がされていたアドバイスが非常に素晴らしかったので紹介させて頂きます。
【大愚和尚の教え】
- お義母さんに小言を言われることを当たり前の前提として、小言を言われた時にどうするかということを想定して練習することが必要です。
- その時(電気を消し忘れて注意された時)の“正しい叱られ方”とは「あ~らゴメンなさいお義母さん!も~私ったらダメですね~。すぐ消しま~す。」とサザエさんのように明るく謝罪し、素直に対応することです。
- 叱られた時に明るく謝罪して素直に対応する姿を子供に見せることで、子供は「叱られた時にどのように自分の感情を処理すれば良いか」を学ぶことができます。そして、自分が叱られた時にも素直に謝罪して行動を改めることが出来る子になるのです。
大愚和尚のこの教えは、まさに「敵意をスルーする」という考え方に基づいたものだと言えるでしょう。電気の消し忘れを姑に指摘された時、ムスッとした顔で電気を消した場合、嫁側は”敵意を向けられた”と受け止めることになりますし、姑側も”敵意を返された”と感じてしまうでしょう。そうなれば、関係は悪くなる一方です。それならば、叱られた時にも明るく元気に謝罪して素直に対応する方が遥かに良いでしょう。
そして、大愚和尚が説いておられる”正しい叱られ方”を身につけることが出来れば、周囲との人間関係も良好になりますし、特に子供に良い影響を与えることができるのです。子供が母親に「うるせークソババア!」などとひどい言葉を吐くようになるのは、親である自分自身が感情をうまく処理できておらず、人を恨んだり、陰口を叩いたりするような姿を見せてきた結果なのです。
文句を言われたり、嫌味を言われたり、叱られたりすることは人との関わりを持つ限り、完全には避けることはできないものです。その時に、あからさまに敵意を向けてくる相手もいるでしょう。ですが、そのような場合においても、敵意はスルーして笑顔と感謝の気持ちで対応する能力を身につけることが出来れば、人生はずっと楽しく豊かなものになるはずです。