「損得勘定で動く人」と言うと世間一般ではおそらく「金に汚い」「平気で人を裏切る」「自己中心的」というようなネガティブなイメージを持つ人が多いでしょう。
しかし、私は損得を考えて動くことができるのはむしろ良い面の方が多いと考えています。何故なら「損得で動くことができる」ということは「自分にとってのメリットを考慮した上で感情を制御できる」ということだからです。むしろこれができない人の方が問題です。
ここでは、私が考える「損得勘定で動く」ことができる人の良い面を挙げていきます。
●感情に流されず、冷静な判断ができる
暴力を振るったり、犯罪行為をしたり、自分勝手に振舞ったりすれば、最終的に自分が損をするということは少し考えれば分かるはずです。そのため、損得で物事を考えられる人はそういった行動をする人は少ないでしょう。また、ビジネスの場において、交渉相手が物事を好きか嫌いかで判断したり、その日の機嫌によって判断を変えるような人だった場合、どれほど大変かということはお分かり頂けると思います。何らかの交渉をする際に相手が長期的な損得を考えて動くことが出来る人であれば、その人にとってメリットがある提案をすれば納得してくれるので、交渉がやり易いのです。
「自分にメリットがあるのであれば、普通は受け入れるはずでは?」と思うかもしれませんが、メリットやデメリットをきちんと説明しても納得してくれる人はかなり少ないのです。例えば、奥さんにDVをしている男が居たとします。そこで彼に「奥さんに暴力を振るっても、一瞬だけ支配欲を満たすことができるだけです。奥さんに逃げられたら元も子もないでしょう。奥さんに優しくした方が最終的にはあなたにとっても得ですよ。」と説明したら彼は納得してDVをやめるのでしょうか?やめる訳がありません。そもそも長期的なメリットを考慮して動けるような人間であれば配偶者にDVをしたりしないでしょう。
●信頼を失うことの損失を理解している
損得で動く人は平気で人を裏切るというイメージがありますが、そのようなことをする人は「損得で動く人」と言うよりも「目先の欲に流される人」と呼ぶのが正しいでしょう。もし、目先の欲のために人を裏切るようなことをすれば、ビジネスにおいて、最も重要な”信頼”を失ってしまいます。信頼というものはビジネスにおいて非常に大きな財産です。長期的な損得を考えることができる人であれば、それを失うことの損失の大きさは理解できるはずです。むしろ損得を考えられない人の方が、目先の欲のために人を裏切る可能性が高いでしょう。
また、人は罪悪感が全くないサイコパスでない限り、人を裏切って大金を手に入れても嬉しいとは感じられないものです。大金を手に入れて、どれほど贅沢をしても、人を裏切ってしまった後悔や罪悪感、報復を受けるのではないかという恐怖によって全く楽しむことが出来なければ、得をしたとは言えないでしょう。そういった精神的な満足感も考慮できるのであれば、目先の欲のために人を裏切るという選択はしないものです。
●礼儀正しい人が多い
損得を考えて動ける人は、人から反感を買うことのデメリットも理解しているので、礼儀正しい人が多いです。口や態度が悪い人は周囲を不愉快にしますが、そういった行為によって一番損をしているのはその人自身です。人から反感を持たれることによるデメリットをきちんと認識できる人であれば、そのようなことはしないでしょう。損得勘定で礼儀正しくされても嬉しくないと言う人もいるかもしれませんが、本当にそうでしょうか?例えば接客業の人は仕事で礼儀正しくしているということは分かっていますが、それでも礼儀正しい人の方が好感が持てるものです。
また、礼儀正しく接することのメリットを理解している人は部下に対しても礼儀や気遣いを忘れないものです。もし社長が社員に対して尊大な態度を取り続けた場合、社員は「あの社長嫌だから転職しようかな?」と考え始めるかもしれません。そうなった場合、社長は優秀な社員を繋ぎ止めるために高い給料を支払わなければならなくなります。
ですが、部下に慕われていれば「ここの会社は給料は安いけど、社長が好きだからもう少し勤めよう」と考えてくれるはずです。つまり同じコスト(給料)を支払っても社員の離職率を低くすることができるのです。ズルい考え方だと言う人も居るでしょうが、パワハラをして優秀な社員に逃げられる愚かな経営者よりも遥かに良いでしょう。
私は別に損得で動ける人が聖人君子だと言うつもりはありません。損得を考えることが出来る人であっても、人を裏切ったり法を犯すことで、そのリスクや損失を遥かに超えるような大きなメリットがある場合はそのような行動をすることも考えられますし、一見して気づかない形での搾取のシステムを狡猾に作り上げることはあり得るでしょう。
ですが、私が今まで見てきた優秀な会社経営者や高所得の人たちは人柄が良く、「何かを得たければ、自分が何かを与えなければならない」ということを理解している人たちが多かったです。これは自分にとって何がメリットであるかということを考え続け、理にかなった行動を取り続けてきた結果です。
世間では「損得を考えて動く」ことは悪い事のように言われがちですが、「長期的な損得を考え、感情を制御して、よりメリットがある行動ができる」ことは世の中全体に貢献し、自分自身も豊かに人生を送る上で必要不可欠な能力であると言えます。