今回は”広い世界を知る”ということの重要性について書いていきます。私は人生を強く生きていく上で、これがかなり重要だと考えています。
“広い世界を知る”ということは、別に海外への渡航経験が多いというような意味ではありません。色々な職業や環境で生きている人の生き方や考え方を知り、様々な観点で物事を見ることができるようになるということです。逆に、世界が狭いと言うことは危険なのです。
例えば、ある企業に勤めている人が、その企業の中での出世競争だけを考えて人生を生きていた場合、出世競争に敗れたら「自分の人生には何の価値もない」と考えて抜け殻のようになってしまうことも考えられます。ブラック企業に勤めて、過労自殺したり、うつ病になったりする人も居ますが、自殺したり心や体を壊したりする前に会社を辞めるという決断ができないのは、「目の前の仕事を頑張らなくてはならない」ということに頭がいっぱいになってしまい、他の思考ができなくなっているからです。
また、ママ友との間で立場が上か下かで必死にマウントを取り合っている主婦などは客観的に見ると実に滑稽に見えますが、本人たちはそのママ友との付き合い以外に外部の人間関係がほとんどないため、その中での上下関係で頭がいっぱいになってしまうのです。
このように、人は世界が狭いと目の前のことが全てになってしまい、失敗に対して極端に悲観的になったり、人に対しても不寛容になったりするのです。
これを防ぐためには、”広い世界を知る”ということが必要になります。自分で多くの世界を体験することができればベストですが、それは容易ではありませんので、幼少時から様々な世界で生きる人の話を聞く機会を持つことが良いでしょう。
そのためには、様々な経験をしている人が家族の中に多く居る大家族だったり、親戚付き合いが多いことが望ましいと言えます。ただし、自分の経験を全く語らない人ばかりだったり、親戚が全員同じ世界に生きているような状況では、あまり意味はありません。そのため、自己主張が強く、様々な職業や世代の人たちが入り乱れるような親戚たちと付き合いながら育った人は世界が広くなり、結果的にメンタルも強い傾向があると私は考えています。
また、必ずしも立派な人の話を聞く必要があるという訳ではないのです。良い影響を与えるかどうかは別としても、メンタルを強くしてくれる人として理想的な人は「男はつらいよ」の寅さんのような人だと言えるでしょう。寅さんはまともに定職に就いておらず、昭和の時代における”ダメ男”なのかもしれませんが、親戚の中にあのような人が居てくれれば、世界がまるで変わって見えることでしょう。
私にとって印象的だったのは、シリーズ第41作”男はつらいよ 寅次郎心の旅路”の中で過労で自殺未遂をした坂口という男に寅さんが以下のように語り掛けるシーンです。
寅さん「おい、お前がいないと会社、つぶれちゃうのか。」
坂口「そんな事ありませんけど。」
寅さん「だったらいいじゃないか。いいか、俺はな、この忙しい体にやりくりつけて、今晩お前に付き合ってやろうと言っているんだよ。それが迷惑なのか。」
坂口「とんでもありません。」
寅さん「だったら、俺の言うことを聞いて、会社なんか行くな。よし、お風呂入ってこい。で桶にね、お湯をこう汲んで、何杯も何杯も、こうやってかける。分かったな。じゃ、行って来い。」
坂口「じゃ、行ってきます。」
寅さん「よし、あーあ、死ぬまで、ガツガツ働くことはないんだよ。なんつったって、いつかは死ぬんだから。」
もし、過労自殺した人が寅さんのような人と出会っていれば、自殺などしなかったのではないかと考えてしまいます。もちろん今の時代に寅さんのような人はなかなか居ないでしょうが、学歴など無くとも楽しく生きている人に年に2,3回正月やお盆の時期に会うだけでも、相当に心が救われることでしょう。
逆に言えば、幼少期から親戚付き合いが少なかった人や親戚付き合いをしていても全く語らない人達ばかりだった場合、世界が狭くなってしまう危険があるということです。過労自殺などは昔からあったでしょうから、「昔だったら・・・」とか「今の時代は・・・」などと言うのは必ずしも適切ではないかもしれませんが、もし現代の人たちのメンタルが弱くなっているのであれば、それは家族や親戚との付き合いが希薄になってきていることも関係しているのかもしれません。