FMEA(Failure Mode and Effects Analysis[故障モードと影響解析])というものをご存じでしょうか?普段の生活ではまず聞く機会の無い言葉ですが、製品開発の世界ではほぼ全ての人が知っている開発手法です。FMEAについて、ここで詳しく解説するのは難しいですが、極端に単純な言葉で表現すると、FMEAとは「これをやったらうまくいかない集」です。
製品開発に限らないことですが、世の中には「確実な正解」というものはなかなかないものですが、「確実な不正解」は結構あります。そのため、過去の経験から蓄積した「確実な不正解」の情報と経験豊富な技術者達の意見に基づいてFMEA(これをやったらうまくいかない集)を作り、事前に可能な限りの失敗を回避するのです。
製品開発におけるFMEA
製品開発の手順を極端に単純化して説明すると、以下のような①~④のプロセスを何度か繰り返すことで市場に出す量産品の開発を行います。
①仕様書を作成
↓
②仕様書に基づいた試作品を作る
↓
③試作品でテストを行う
↓
④テストで判明した不具合に対応するために仕様書を修正
ですが、現代の製品開発工程では、試作品を作る前に必ずFMEAの作成を行います。
①仕様書を作成
↓
②FMEAを作成し仕様書を修正する
↓
③仕様書に基づいた試作品を作る
↓
④試作品でテストを行う
↓
⑤テストで判明した不具合に対応するために仕様書を修正
つまり、仕様書を作ってすぐに試作品を作るのではなく、仕様書の段階で「この設計では、ここで不具合が出る」という要因を徹底的に探し、それを事前に潰しこんでおくのです。FMEAを作成すると、試作品を作った時に出てくる不具合の数を大幅に減らすことができるため、試作品を作る回数も少なくすることができ、費用も時間も節約できるのです。
このFMEAの作成は現代の開発では、「やって当たり前」のものとして認識されており、開発手順の国際標準規格でも規定されています。余談ですが、トヨタがフォードに勝ったのは、このFEMAを徹底的に行ったことが原因の一つとも言われています。
学習におけるFEMA
学習マネジメント塾はビジネスにおけるマネジメントの手法を勉強に応用する塾ですので、このFMEAの考え方も取り入れています。つまり、学習においても、「これやったらうまくいかない集」を作っておくのです。私は当塾のコンセプトで「マネジメントに万人共通・永遠不変の正解は無い」と書きましたが、マネジメントにも「万人共通の不正解」はあります。そのため、まずは勉強における万人共通の不正解を徹底的に取り除くことから始めます。
例えば、以下のような間違った勉強法を用いている生徒さんもおられるのではないでしょうか?
<勉強法の不正解の例>
・一つの教科で何冊もの問題集を並行して勉強する。
⇒まず一冊問題集を徹底的に勉強してから次に進むのが正しい。
・数学の問題を自力で解けるまで考え続ける。
⇒解けない問題を考え込むのは時間の無駄なので、少し考えて分からなければ答えを確認するべき。
・英単語を毎日10個ずつしっかり集中して覚える。
⇒英単語はどれだけ集中しても一度では覚えられないので、100個以上の単語を何度も反復して覚えるべき。
その他にも、睡眠時間を削って勉強して昼間居眠りしていたり、勉強する目的や目標があいまいだったり、勉強する場所や時間を決めていなかったり、すぐにスマホをいじってしまったりなど勉強と勉強のマネジメントにおける間違いをしている生徒さんは実はかなり多いはずです。それらの不正解を徹底的に取り除くだけでも相当な成果が見込めるでしょう。
人は、「今すぐに完璧な正解が欲しいと」考えてしまうものです。完璧なの正解を得ることは難しいですが、不正解を徹底的に取り除くことこそが最終的な正解に近づく最も効率の良い方法であると私は考えています。