学習塾経営を行う以上、論じることを避けることができない”学歴”というものについて書かせて頂きます。

学歴が一番役に立つのは、就職活動の時です。大企業での採用には、いわゆる”学歴フィルター”というものが存在しており、一定のレベルよりも下の学歴の人は書類審査が通らず、面接すら受けられないという現状があります。何故、このようなことが起こるのでしょうか?

 

学歴フィルターが存在する理由

これは企業の採用担当者の立場に立って考えてみれば分かると思います。誰もが名前を知っているような大企業は毎年、採用の時期には何十万枚というエントリーシートや履歴書が送られてくるはずです。選考を行う人事担当者は限られた人数と時間の中でその中から選考を行わなければなりませんが、その時に全てのエントリーシートや履歴書をじっくり見る余裕などあるはずがありません。

となれば、入社希望者を”優秀である可能性が高いグループ”と”優秀である可能性が低いグループ”に分けて後者をばっさりと切り捨てるという作業をまずしなくてはならないのです。その基準となるのが言うまでもなく学歴です。これを酷いと言っても始まりません。

いわゆるFラン大学にも優秀な人は居るでしょうが、一流大学から優秀な学生を探すのと、Fラン大学から優秀な学生を見つけるのでは、前者の方がはるかに労力がかかりません。企業にとって「労力がかかる」ということは「人件費がかかる」ということであり、「お金がかかる」と同義です。そうなれば、わざわざお金や労力を使ってFラン大学の学生の選考を行う理由など無いのです。

また、採用担当者としては、採用した人が全く役に立たず、上から「何故あんな奴を採用したんだ?」と訊かれた時のことも考えなければなりません。その時に、「一流大学を卒業していたから」と言えば、何とか釈明することができますが、Fラン大学出身だった場合はそれすらできないのです。つまり採用担当者からすれば、Fラン大学の学生を採用するということは報われる可能性が低い上にリスクも大きいのです。

 

 

「学歴は役に立たない」という意見がある理由

世間では「学歴は大事だ」という人もいれば「学歴なんか役に立たない」と言う人も居ます。ですが、ある意味そのどちらも正しいのです。

企業の入社試験では学歴が低いと書類選考が通らず、面接という試験を受けることすら許してもらえないのです。これは大学受験で言えば、試験会場に入れないようなものです。そのため、私は学歴とは社会に出る時の”試験会場への入場券”だと考えています。就職試験を受けようとする時、試験会場への入場券があるのと無いのとでは大違いなので、そういう点では学歴は重要だと言って良いでしょう。

しかし、入場券はあくまで入場券であり、社会に出た後の成功まで約束してくれる訳ではありません。高学歴でも仕事ができない人は確実に存在していますが、その人が「俺は一流大卒なんだぞ」と言ったところで、痛々しいだけです。一度社会に出てしまえば、学歴などは「過去の栄光」に過ぎないのです。それどころか「あいついい大学出てるのに、全然使えねーよな」などと逆に馬鹿にされることすらありえます。

そういう意味で言えば、高い学歴があるということは社会で継続的な成功を得るのには役に立たないと言って良いでしょう。

 

大学受験は自己実現の方法で良い

保護者の方々が自分の子供に「良い学校に行け」というのは、親の見栄ということもあるでしょうが、一番は「就職で有利になりように」ということや「豊かな人生を歩んで欲しい」という気持ちからでしょう。

しかし、例えば東京大学を目指している高校生であっても、そこまで先のことは考えてはいないはずです。東大を目指して勉強している高校生は甲子園を目指して野球を頑張っている高校球児と同じようなものであり、ただ純粋に「自分が頭が良い」ということを最も分かりやすい形で証明したいとか、周りの人に凄いと言われたいとか、過去に自分を馬鹿にした人間を見返したいということなのでしょう。

私はそれで全く問題は無いと考えています。むしろ、生涯所得とかキャリア形成がどうとか言っている方が高校生として不自然です。学歴というものを「過去に誰よりも努力した証明」として、大人になった時に自信の根拠の一つとして持つことができれば、それで十分でしょう。