世の中には様々な形での制約というものが存在します。それらの制約を嫌なものだとか邪魔なものだというように認識している人も多いですが、最近私は制約というものがあるからこそ、より良い結果を生むこともあるのではないかとも考えるようになりました。
制約が良い結果を生むこともある
現金で10万円を貰えるのと、10万円分の旅行券を貰えるのではどちらが良いか?と訊かれたら、ほとんどの人が現金で10万円の方が良いと答えるでしょう。しかし、10万円の現金より10万円分の旅行券の方が、より好ましい結果を生むこともあるのです。
現金で10万円を貰って、それを銀行に預ければ預金の残高が10万円分増えます。確かにその場合も嬉しいですが、銀行残高が増えるだけの変化ではその喜びはそこまで長くは続かないでしょう。それに対し、10万円分の旅行券は旅行にしか使えないからこそ、「これを使ってどこに旅行に行こうかな?」と考える楽しみがあるのです。出不精な人でも「旅行券があるのなら旅行に行ってみようかな」と考えるかもしれませんし、「旅行に10万円も使うのはもったいない」と考える人でもあまりストレスを感じずに使うことができます。これらは旅行にしか使えないという制約があるからこその効果であると言えます。
旅行券は人へ贈るギフトとして使われることが多いです。その理由は現金を直接渡すのは気が引けるからということもあるでしょうが、受け取った人が「銀行の残高が10万円分増えた」よりも「楽しい旅行ができて、家族も喜んだ」という状況を生む方が贈った側も嬉しいからという理由が大きいでしょう。これは図書券や商品券などでも同じことが言えます。
私は少し前に、旅行に便利なあるクレジットカードを作りました。そのカードは年会費は少し高いですが、ホテルの宿泊に使えるポイントが貯まるだけではなく、一年に一回、カード会社が提携するホテルの無料宿泊券(有効期限一年)を貰えるのです。普通に年会費が無料で買い物に使えるポイントが貯まるクレジットカードでも良かったかもしれませんが、私がふと考えたのは、お得に買い物ができることよりも一年に一度無料宿泊券が貰える方が家族全体の幸福度が大きいのではないか?ということです。
家族で旅行に行こうと思っても、つい先延ばしにしてしまったり、「お金がもったいないかな」と思って行かなくなったりするということはよくあります。しかし、必ず一年に一回、有効期限一年の無料宿泊券が届くのであれば、これから毎年必ず一回は家族で旅行をして楽しい思い出を作る機会を持つことができるのです。その価値はお金以上のものがあり、単純にお得に買い物ができるよりも得なのではないかと私は考えたのです。
お金や時間の使い方にあえて制約を課す
以前、ビジネス系の講義をしているユーチューバーの人が、より幸福度の高いお金の使い方として「プレゼント用口座」を作るというアイディアを紹介していました。
【プレゼント用口座の考え方】
- 毎月、数千円程度で良いので特定の口座に積み立てて、そのお金はプレゼントをしたり、ご馳走したりするなどして人のために使う。
- 「これは人へのお祝いのために使うお金」と考えていると惜しいという気持ちも減らせる。
- 人へのお祝い事に対して敏感になり、人と幸せを共有できる。
- 自発的に人のためにお金を使うようになるので、人間関係も良好になる。
- 人のためにお金を使う喜びを知ることで、結果的に無駄な浪費を減らす効果もある。
私はこれを聞いていて、なるほどと思いました。誰かのためにお金を使う時にいちいち悩むのであれば、「これは人のために使うお金」と事前に使い方に制約を課しておいたお金の方が、ずっと気持ちよく使えるでしょう。
また、以前妻は私との会話の時間が減ってきているのことを気にしているようでしたので、私は「この曜日のこの時間帯は妻と一週間のことについて話をする」というルールを決めました。つまり、特定の時間帯において時間の使い方に制約を設けたのです。しかし、そうすることによって、私も「最近、妻とのちゃんと話せてないかな」ということをあまり気にせずに済むようになりました。つまり、制約を設けることで、逆にストレスを軽減することができたのです。
制約というものは、人を縛るものであり、自由を奪うものであるというネガティブなイメージを持つ人も多いでしょう。しかし現実には、制約によって人は大きな喜びを得ることができたり、ストレスから解放されたり、行動的になったりすることもあります。成功者はそこをよく理解しているからこそ、逆に少し質素な生活をしていたり、お金や時間の使い方にこだわりを持っていたりする人がいるのではないでしょうか?