学生のうちは、「やってもいないうちから出来ないなどと言うな」と言われることが多いです。しかし、ビジネスの世界においては、出来ないことは「出来ない」と言わなくてはなりません。何故なら、ビジネスでは学生の頃と違い、責任が伴うからです。

学生の時、「次のテストで全教科90点以上取る」とか「次の大会で優勝する」といった目標を立てて、それが達成できなかったとしても、誰かに迷惑がかかるということはありません。しかし、ビジネスにおいて、例えば「〇月×日までにこの部品を△個納品して欲しい」という依頼に対して「出来ます」と宣言しておきながら、結局納品できなかった場合、相手に多大な迷惑をかけることになります。最悪の場合、訴訟を起こされることすらあり得るのです。そんなことになるくらいなら、最初から「出来ません」と言わなくてはならないのです。

 

出来ないこと、得意でないことはすべきではない

出来ないことを出来ないと言っても信用を失うことはありませんが、出来ないこと出来ると言って中途半端な仕事をしてしまうと、信用を失うことになります。それならば、最初から出来ないと言っておいた方が良いのです。

例えばラーメン屋がカレーをメニューに加えたとします。店側は「美味しいラーメンを食べさせてくれる上に、そこそこの味のカレーも出してくれる店」にしているつもりなのでしょうが、このようなことは大抵うまくいきません。何故なら、その店でカレーを食べた客にとっては「この程度の味のカレーしか出さない店」という評価にしかならないからです。それならば最初から美味しいラーメンを出すことだけに集中するべきなのです。

実際、メニューの数を極めて少なくすることで、調理の手間やコストを抑え、成功している飲食店もあります。ビジネスにおいては、得意でないことやあまりにコストがかかることであれば、最初から”やらない”とはっきり宣言することも戦略の一つなのです。

 

出来ない・やらないと宣言する勇気も必要

他の塾の話を持ち出すのは恐縮ですが、私が素晴らしいビジネスモデルを構築していると思うのは武田塾です。武田塾が素晴らしいのは”授業をしない”、”独自の教材を作らない”という点です。この“やらない”と宣言していることが逆に素晴らしいのです。

まず、”授業をしない”というところですが、授業は受け身の学習であるため、学習効率が悪いと私も考えています。効率が悪いと判断したものはバッサリ切り捨てるという決断をしたことが画期的だと言えます。

また、塾で既製品の教材を使っていると手を抜いていると思われてしまうため、多くの学習塾は独自の教材を作っていますが、既製品の教材は、各出版社において長年受験勉強の傾向を研究してきたプロ達が社の威信をかけた渾身の一冊を出しているのです。学習塾がどれほど頑張ってもそれらを超える一冊を出すのは困難だと言えるでしょう。そのため、武田塾では既製品の教材を徹底的に研究し、それらを使った最も学習効率が良い勉強方法を指導しています。無理に独自の教材を作るよりも、その方が遥かに学習効率が高いと言えます。

このように、出来ないことや効率の悪いことをを出来ない・やらないと宣言し、最も効率が良いことに注力する方が成功に近づくことができるのです。

 

学習マネジメント塾も基本的に”勉強ではなく、勉強に必要なマネジメントを教える”というコンセプトを持っています。これは、”勉強を教える”ということに注力しても、優秀な講師を多く揃える大手の学習塾には勝てないと考えているからです。そのため、”勉強に必要なマネジメント”を教えることに特化し、”勉強を教える”ことには注力しないということをあえて宣言しています。私はこれこそが、生徒にとっても当塾にとっても最も成功に近づける戦略であると確信しています。