教育の世界では、教育で問題に対応しようとしますが、ビジネスにおいては、教育以上に仕組み化が重要になります。これについては教育と仕組み化のページに詳しく書いていますが、改めてビジネスにおける仕組み化の重要性と具体的な活動について触れておきます。
仕組み化は恒久的な対策
中学生や高校生であれば、ミスをした時に「次は気を付けます」で済ます場合も多いですが、仕事においてミスをした時に「次は気を付けます」だけでは話になりません。例えば、製造工程で作業者がミスをしたことで不良が出たのであれば、その原因を「作業者がミスをしたから」、対策を「作業者が気を付ける」ではダメだということはご理解頂けると思います。この場合、作業者がミスをしたということが事実であったとしても、ミスを生み出さない「仕組み」こそが必要になるのです。
何故なら、人がミスをしないように管理するのは非常に困難ですが、ミスを生み出さない「仕組み」を構築することができれば、人の能力に依存せず、恒久的にミスを防ぐことができるからです。例を挙げれば、作業者が間違った部品を取り付けてしまったというミスに対して、間違った部品を取り付けることができないように製品の構造自体を変更すれば、誰が組み立てても間違えようがないのです。
成果が人に依存することは好ましくない
ビジネスでは成果があまりに特定の人の能力に依存することはリスクと捉えられます。何故なら、人は突然退職したり、事故や病気で働けなくなったり、最悪死亡することもありえるからです。そのため、ちょっと冷たい言い方ですが、その人がいなくなっても困らないようにしておく必要があるのです。業務監査などにおいても監査を受ける側が「彼が優秀だから大丈夫です」などと言った場合、監査者は「この人が明日死んだらどうするの?」と考え、そのリスクに対処していないこの職場は危ういと判断するのです。
また、成果が人に依存することのもう一つの問題点として、「成果が安定しない」ということがあります。どれほど優秀な人であっても、一人の人間がこなせる業務量には限界があります。そのため、優秀な人がこなしきれない仕事は別の人がやらなくてはならない訳ですが、優秀な人の能力に成果が依存していた場合、別の人が仕事をしたら成果が落ちることになります。つまり、成果が安定しなくなるということです。これもビジネスを進める上でのリスクだと言えるでしょう。
仕組み化による対策の例
仕組み化における対策には具体的にどのようなものがあるかを改めて書いておきます。
設備や設計の改善
上述したように、組み立て工程で間違った部品を取り付けることができないように設計を変更することや新たな検査設備の導入なども仕組化による対策だと言えるでしょう。そして、製造業において品質以上に重要なのが労働災害の防止です。労災が発生した時は、作業者への安全教育ももちろん行いますが、電流が流る部分に触れないように設備の構造を変えるとか、人が近づいたらセンサーで感知して自動停止する仕組みを取り入れたりします。
帳票の改善
例えば必要な部品の一覧表を作り、部品Aが1000個、部品Bが2000個必要だったのに一覧表の段を見間違えて、部品Aを2000個注文してしまうようなミスをしたとします。このような場合は、一覧表の行に一行おきに色を付けておいたり、行の高さを広げるなどすることで、見間違いが起こる可能性を低くすることができます。
チェックリストの運用
文書を作成する際にチェックリストで確認すれば、見落としはかなり防げます。更にチェックが完了したチェックリストを添付しなければ、上司の承認印がもらえないというようなルールにしておけば、チェックリストでの確認をサボることもできなくなります。
監査の実施
設備や機器を定期的に点検することは重要ですが、何の確認もしなければ、そのうち誰もやらなくなることが考えられます。それを防ぐために定期的な監査で点検記録などを確認することでルールの逸脱を防ぐことができます。監査は設備や機器の点検だけでなく、開発プロセスの遵守や情報漏えいの防止など様々なものに対して行われます。
学習マネジメント塾における仕組み化の活動
学習塾では、優秀な講師が指導をすることによって成果を出すという考え方が一般的です。そのやり方を否定するつもりはありませんが、これは成果がその講師の能力に依存している状態であり、明日その講師が交通事故に遭ったら崩壊してしまう危ういシステムだとも言えます。
もちろん、勉強を教えるということにはスキルが必要なので、優秀な講師を確保することから逃れることは通常できません。ですが、当塾では勉強そのものよりも勉強のマネジメントを教えるというスタイルであり、マネジメントは勉強そのものよりも遥かに仕組み化が容易です。例えば、学習計画を立てて、学習開始時刻になったら連絡を入れるというルールを運用したり、学習記録を取った上で定期的な監査を行い、学習プロセスに不備がないかを確認するなどすることで”サボれない仕組み”を構築します。
もちろん当塾でも優秀な講師の確保のための活動はしますが、それ以上に仕組み化によって安定した成果を恒久的に出すシステムの構築を目指しています。