きちんと責任を取ることはビジネスにおいても人間関係においても非常に重要です。しかし、”人に対して”責任を求めるのであれば、理解しておかなくてはならないことがあります。それは、以下の二つだと私は考えています。

  • 相応の対価を支払う
  • どれほど良い待遇でも無責任な人はいる

 

私の中学生の頃の経験

本題に入る前に、私が中学生の頃の経験について触れておきます。

私は中学であるスポーツの部活動をしていたのですが、ある日、私を含めた部員達は、小学生の大会の審判を務めることになり、日曜日にその大会の会場まで呼び出されました。もちろんバイト代も昼食代も出ませんし、会場までは自転車で30分以上かけて移動しました。要するに中学生の私たちはタダ働きをさせられたのです。

そして、私が審判を務めた団体戦の試合で、先鋒と次鋒が最初に試合をしてしまうという手違いが起こりました。その時、試合をしていた小学校の顧問が「お前は審判だろう。審判であるお前が確認しなかったのだから、お前の責任だ。」と言いました。

確かに、「審判には試合を問題無く進行させる責任がある」というのは正論ですし、その当時は「そうなのかな?」と思いましたが、中学生をタダ働きさせておいて、「お前が責任を取れ」と言うのは明らかにおかしいでしょう。

もちろん、”お金のやり取りがないから無責任で良い”という訳ではありません。そんなことを言い始めれば、学生の部活動自体が成立しなくなります。人はお金が介在しなくても責任を持つことはできなくはありませんが、それはあくまで自分自身や自分の仲間のためだからできるのです。全く知らない他人同士の試合の審判をタダ働きでやって、責任まで持つことなどできるはずがありません。

この時の小学校の顧問は私をタダ働きの中学生だと知っていたかは分かりませんが、もし知っていたとしたら、自分が言っていることの不条理さに気づいていなかったのだろうかと考えてしまいます。

 

 

働く側に”代わりの利かない仕事”を提供する

当然ではありますが、人に責任を持って仕事をしてもらうためには、相応の対価を支払うことが最低条件です。もちろん給料だけで仕事の良し悪しが全て決まる訳ではありませんが、それでも給料は大事です。

時給800円程度の最低賃金に近い給料で働いているアルバイトに対して「責任感を持って仕事をしてくれない」と嘆く雇用者がたまにいますが、私はそれもある程度は仕方ないと考えています。時給800円のアルバイトなど、辞めてもすぐに同じ程度の給料をくれるバイト先が見つかるはずですので、働いている人からしても、時給800円程度の給料しか貰えない仕事は、”いくらでも代わりが利く仕事”でしかないのです。そんな仕事で大きな責任を引き受けようとする人は普通いないでしょう。

雇用側が働く人に責任感を持って仕事をして欲しいのであれば、まず雇用側が”代わりが利かない仕事”を提供しなければならないのです。そのためには、もちろん責任に見合った給料も支払わなくてはなりませんし、待遇の改善、ハラスメント防止、職場の人間関係の改善など様々な努力をしなくてはならないのです。

 

 

どれほど良い待遇でも無責任な人はいる

きちんと対価を支払ったり、待遇の改善を行うことは必要ですが、それはあくまで”最低条件”でしかありません。どれほど良い環境を用意しても、それで人が責任を持って仕事をしてくれる保証はないのです。残念ですが、どれほど恵まれた職場環境でも無責任な人はいます。そのような人を責任感のある人に変える方法を書きたいところですが、それはなかなか難しいものがあります。こればかりは採用時に気を付けるしかないでしょう。

雇用者側にとって辛いのは、従業員が無責任な仕事をした結果に対する責任も持たなくてはならないことです。当然ですが、従業員がいい加減な仕事をしてお客様に迷惑をかけた場合、それは”会社の失態”であって、その従業員を雇用した会社の監督不行き届きだとお客様は解釈します。

そして、責任を取ることの本質は「危機に陥らないように事前に対策を打つ」ことです。この場合、「従業員がミスをする」ことや「従業員がいい加減な仕事をする」ことも事前に予想して、それに対する対策を事前に打っておく必要があるのです。そのため、いい加減な人がいると、かえって仕事が増えてしまうことも珍しくありません。

そのため、責任感を持って仕事をし、あらゆるトラブルに対する事前対策を万全に整えることができる人こそが雇用者側が最も求めている人材であると言えます。雇用者は特別に良い待遇を用意してでもそのような従業員を手放すべきではないでしょう。