仕事において、自分の能力だけでは解決できない問題にぶつかることはしばしばあります。そのような時は、人に助けを求めるべきです。しかし、仕事ができない人ほど、この「人に助けを求める」ということをしない傾向があります。はっきりと認識すべきなのは、「人に助けを求めること」と「人に責任を押し付けること」は全く違うどころか真逆だということです。
無責任な人は助けを求めない
意外に感じるかもしれませんが、無責任な人というのは困った状況に陥っても、人に助けを求めず一人で抱え込もうとする傾向があります。何故なら、「助けて欲しい」と依頼してうまく行かなかった時に、その”依頼したこと”に対する責任すら引き受けたくないと考えているからです。そのため、そういう人は自分が何も言わないのに周りの人が勝手に助けてくれることを期待します。流行の言葉を使うなら、無責任な人は”忖度”を求めているのです。
人に助けを求めない無責任な人の思考形態は以下の通りです。
人に助けてくれず、仕事がうまくいかなかった場合
助けてくれなかった周囲が悪い。
人が助けてくれたが、仕事がうまくいかなかった場合
自分は助けてなんて言ってない。勝手に手を貸してきて、失敗したのだからそいつのせい。
このような人は最終的な目的が”仕事の成功”ではなく、”責任の回避”であるため、人に助けを求めなければ、最終的にはどう転んでも「自分のせいじゃない」という状況に持って行ける(と思っている)のです。これが無責任な人が助けを求めない理由です。
助けを求めなければ、周りの人はうまく行っていると判断する
当たり前ですが、普通の人は自分が抱えている仕事や問題への対処に時間を使っており、わざわざ他人の問題に首を突っ込んで解決してあげようなどとは考えません。そのため、自分が助けを求めなければ、周りの人は”うまく行っている”と判断するのです。仕事でも勉強でも人間関係でも、困難な問題を抱えている人は、まず人に助けを求める勇気を持たなくてはなりません。
例えば、夫からDVを受けている女性などでも、誰かがDVを受けている自分の存在に気づいて助けてくれるなどということを期待していてはダメなのです。DV夫は外面だけは良いケースも多いため、DVを受けている女性が何も言わなければ、周りの人はその家庭が”うまくいっているもの”と判断します。DV夫から逃れたければ、勇気を持って「助けて欲しい」と言わなくてはならないのです。仕事でも勉強でも全てのことにおいてこれと同じことが言えます。
学習マネジメント塾での指導
当塾では、生徒に学習のマネジメントや学習方法を指導しますが、その際に塾側から勝手に気を利かせて生徒を助けるということは基本的に行いません。そのようなことをし続けると、生徒は「こっちから何も言わなくても、塾側が勝手に気を利かせて助けてくれるはず」と考えてしまうからです。そのような考え方の悪癖が身につけば、うまくいかなかった時に「助けてくれなかった塾が悪い」という発想になってしまうのです。
もちろん、何か問題を抱えている生徒を放置する訳ではありません。そうではなく、「君は~がうまくいっていないようなので、こうしなさい。」というような指導はしないということです。生徒側が抱えている問題に気づいた場合、当塾では以下のように指導します。
【当塾での指導の手順】
「何か困っていることはありますか?」と生徒に訊く。
↓
生徒から明確な答えか返って来なければ「~がうまくいかずに悩んでいるのではないですか?」と訊く。
↓
生徒がYesと答えたら、「では、私に助けて欲しいですか?」と訊く。
↓
生徒がYesと答えたら、「では、『助けて下さい』と言ってください」と伝える。
↓
生徒が「助けて下さい」と言ったら具体的な助言や指導をする。
何故、こんな回りくどいことをするのか?生徒が困っているということに気づいたのであれば、すぐに助言や指導をしてあげれば良いじゃないか?と思うかもしれませんが、自分から「助けて下さい」と言うことが重要なのです。何故なら、仮に生徒が何かに困っているとしても、「困っているけれど助けを求めずに自力でやる」か「困っているから助けを求める」かは自分で決断することだからです。生徒自身に明確な決断をさせることで、生徒の心の中から「俺は別に助けてなんて言ってない」などという無責任な考えを徹底的に排除するのです。
マネジメントは結果に対する全責任を自分で取る覚悟を持って、明確な決断をし続けなくてはなりません。そのため、人に「助けて下さい」と言うだけの勇気と決断力を養うことが必要なのです。上記のようなやり取りは、回りくどいように見えますが、それを身につけるためのトレーニングだとご理解頂きたいです。