先日、新型コロナウイルスの影響により、とうとう緊急事態宣言が発令されました。ただ、海外のように出歩いている人を処罰するような強制力が無いため、その効果を疑問視する声もあることも確かです。しかし、私は「緊急事態宣言が出た」という事実だけでも結構効果はあるのではないかと思います。

 

大義名分を与えることが必要

仕事を円滑に進めるためには全員が一つの目標に向かって力を合わせることが求められます。しかし、それが正しいと分かっていても、全員がそれをすることは困難です。その時にトップの人間から「このようにしなさい」という的確な指示があることで格段に仕事がやり易くなります。

例えば、ある製品の製造工程で現場の担当者が品質問題に発展しそうな問題を発見したとします。その時に、担当者が製造工程の改善を訴えても聞き入れてもらえないことが結構あります。

何故なら、製造工程を点検、整備するのであれば、その間製造ラインを止める必要がありますので、生産計画に狂いが生じることになりますし、新しい機器を導入する必要がある場合であれば、お金もかかってしまうからです。

そのようなことをする際には顧客や経営陣に事情を説明して了承を得る必要がありますが、ただでさえ仕事が忙しいのに、そんなことまでやりたくないと考える人がほとんどでしょう。そのため、現場の担当者一人が改善を訴えても黙殺されてしまうことが多いのです。

しかし、社長から「品質改善活動を行い、結果を報告しなさい」という指示があれば、「社長の指示だから」という大義名分のもと、現場の担当者の改善を求める声も通り易くなります。つまり、トップの人間の指示を自分の仕事を円滑に進めるためのツールの一つとして活用するということです(これについては、頼るのではなく、使うの記事をご参照願います)。

今回の緊急事態宣言でも、本当は休みにしたいと思っていながら顧客からの反発を恐れてできなかった経営者が「緊急事態宣言が発令されたから」という大義名分のもと休業に踏み切ることができるという効果が期待できます。そのため、強制力が無くても緊急事態宣言が発令されたという事実だけでもある程度の抑止力はあるのではないかと私は思います。

 

リーダーシップとは

トップの人間に求められるのは、「これを判断したのは私だから、全責任は私が取る」という姿勢を見せることです。そのため、トップの人間はそのプレッシャーに耐える胆力が求められます。

そして、リーダーシップをとることは必ずしも具体的な指示を出すことではありません。トップの人間が現場を熟知していれば良いですが、そうでないのであれば現場を知らない人間にしゃしゃり出て来られたら迷惑です。そのため、大筋の方向性は示す必要はありますが、具体的に何をするかは現場の人間に必要な権限を与えて、見守るということが大事になります。

今回の新型コロナウイルスの件では「経済活動や学業以上にに感染を拡大させないことが優先される」という方針を国家全体で明確にすることが重要ですが、具体的にどのような対策を行うかや休業するかどうかの判断は各自治体や各企業の経営者が行う必要があります。

「具体的にどうすれば良いかを明確に決めて欲しい」という意見もあるでしょうが、そう考える人は現場の細かい判断の責任までトップの人間に持って欲しいという意識があるのではないでしょうか?

我々に求められることは、何も考えずにトップの人間の方針に従うことではなく、トップの人間が示した方針の目的と意図を読み取り、自分の仕事に責任を持って行動し続けることでしょう。