自分は何を目指しているのかのページでも触れていますが、仕事にせよ勉強にせよ、人は何かの活動を行っているうちに、本来目指すものを見失ってしまうということは非常によくあります。

例えば、成績を上げたくて勉強を頑張っていたはずが、少し怠けたことを親に叱られたことがきっかけで「親を納得させること」が勉強の目的になってしまったり、品質の向上のために製造工程の改善を提案したのに、製造工程を変えたくない製造部門と改善を求める品質部門の板挟みになってしまい、結果的に「その場を穏便に収めること」が目的になってしまうというようなことです。

しかも、この”ずれた目的”で他者と利害が一致してしまうと余計に問題が深刻になります。

 

ずれた目的での利害一致が解決を困難にする

名前は出しませんが、以前ある芸能人が大学生の時に家庭教師をやっていた話を聞いたことがあります。その人は生徒と共謀して家庭教師の仕事をサボっていたそうです。つまり、生徒の側は「勉強をサボって遊びたい」「親を納得させたい」という目的があり、家庭教師の側は「楽して金を儲けたい」という目的があったのです。そこで利害が一致した結果、家庭教師は勉強を全く教えずに遊んでいながら給料だけもらうというバカバカしい状況が生まれてしまった訳です。

この時点で「生徒の成績を向上させる」という本来の目的は全く見失っています。家庭教師と生徒のどちらかが本来の目的を見失わなければ、改善の機会もあったでしょう。つまり、家庭教師は生徒にやる気を持ってもらうために頑張ったでしょうし、生徒はやる気のない家庭教師を代えてもらうように動いたりしたはずです。しかし、両者とも目的がずれていて、しかも利害が一致してしまっていては生徒の親が気づかない限り改善の機会は完全に失われてしまいます。

このように本来の目的とズレてしまった目的で利害が一致してしまうということは、非常によく起こることなのです。分かり易い例で言えば、官僚や企業の癒着などもそうでしょう。省庁などは、本来「国民の利益のため」に働くべきなのですが、多くの省庁では「省益のため」や「天下り先の確保のため」に動いているのが実態です。しかもそれで官僚と企業の利害が一致しているために余計に解決が難しくなっています。この問題については社会問題を扱うブログが幾らでもありますで詳しくは書きませんが、まさに”ずれた目的での利害一致”の究極だと言えるでしょう。

 

目的のずれを防止するためには

では、このような目的のずれやずれた目的での利害一致を避けるためにはどうすれば良いでしょうか?それは、自分自身の最終目的を常に意識することを習慣化するしかありません。これは「初心を忘れない」ということであり、スティーブン・R・コヴィー博士の「七つの習慣」の中の第二の習慣「終わりを思い描くことから始める」を徹底するということです。

上述した家庭教師と生徒が共謀して勉強をサボっていた例においても、家庭教師の側はせいぜい親にバレて家庭教師をクビになる程度のリスクしかなかったでしょうが、生徒の側はずっと勉強をサボっていた訳ですから、受験の時に困ることになったはずです。つまり、生徒の側が最終目的を見失っていなければ避けられたのです。

そしてもう一つ重要なことは、ずれた目的での共謀を持ち掛けてくる相手には極力近づかないことです。官僚と企業の癒着の問題においても、もし自分が官僚か企業の担当者の立場だった場合、癒着を疑われる相手とは個人的に会うこと自体を避けた方が無難でしょう。人は自分で思っている以上に周囲の状況に流されることが多いので、最初はそんな気が無くても、そういった相手と軽い気持ちで会った時に豪華な接待を受け「こんなに良い思いができるなら・・・」とついつい考えてしまうものなのです。

 

学習マネジメント塾での指導

学習マネジメント塾では、「最終目的を明確に意識すること」を徹底するように指導しています。それは、勉強をする目的は「親や教師を納得させること」でも「”勉強している”という事実から安心を得ること」でもなく、あくまでも「自分の将来のため」だということを忘れないようにするということです。

もし「親や教師を納得させること」が目的だった場合、親や教師の目を誤魔化すことばかりを考えることになりますし、「安心を得ること」が目的になった場合、自分の不安の種から目を逸らす癖がつき、苦手科目の勉強をしなくなったり、模試を受けて自分の実力を知ることを避けたりするようになるでしょう。そのような“目的のずれ”がある限り一定以上の成果は絶対に出ないのです。そして、あまり無いとは思いますが、勉強をしているふりをして周囲の目を誤魔化そうなどという共謀を持ち掛けるような人間には近づかないようにも指導します。

こういったことは勉強だけを教える一般の学習塾ではなかなか教えてくれないことではありますが、当塾ではむしろこのことを勉強そのもの以上に重要なこととして最初に教えることにしています。何故なら、成績が上がることや志望校に合格することはあくまで結果であり、結果を得るためには、そこに至るまでの考え方を改善することが絶対条件だからです。